GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

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デバイスとシステムの架橋、半導体集積回路の研究

デバイスとシステムをつなぐ回路設計

我々の研究テーマは半導体集積回路の設計。デバイスに関しては、これまでどうやって性能を上げるかという話が多かったわけですが、最近は何に応用するかが大事になってきました。せっかく性能のいいものをつくっても、応用先が決まらないと、あまり意味が無い。そういう意味で、回路設計という研究テーマは、デバイスと応用システムをつなぐ非常に大事な機能を持っています。

ICの設計、試作、評価まで

研究の流れとしては、まず研究室でマスク設計によりデータをきっちりつくります。これは建築の製図のようなもの。そのデータに基づいてIC工場で試作品を製作した後、再び研究室内で評価して試作品が狙い通り機能するかどうかを確かめます。

下の写真は我々が試作した高周波のアナログ集積回路であるGPS受信器です。約3mm四方に微小デバイスを集積し、1チップ化を実現しました。10cm以下の位置精度を実現するために、周波数を2つ使う方式の受信器です。

ICのマスク設計
ICのマスク設計
ICの評価
ICの評価
次世代GPS受信器(位置精度10cm)
次世代GPS受信器(位置精度10cm)

近年、様々な社会的ニーズに応え、無線技術が発達してきました。アンテナが埋め込まれた博覧会の入場券や空港での荷物タグ等はその一例です。これはRF-ID(Radio Frequency Identification)と呼ばれる技術で、発電と情報処理機能を備えたICチップとアンテナを一体化してカード等に装着しています。アンテナで受信した電波を電力に変換し、回路を動かす仕組みです。今後ユビキタスが進むにつれ、RF-IDの用途はさらに広がるでしょう。

自動車/交通、ロボット、防犯/防災、環境管理、食料品管理等、幅広い分野で利用されている各種センサーにRF-IDの機能をつければ面白い機能がうまれてくるはずです。人間の身体(血糖等)や太陽光をはじめ、我々の身の回りに散らばっている超小型分散型電源を利用できれば、センサーネットワークを構築することができます。但し、RF-IDの場合、電波を変換して得られる非常に微弱な電力/電圧でICを動かす必要があります。これに対し、我々は低電源電圧で動くICの開発も進めており、0.5Vで動く高周波増幅回路(アンプ)の小型化(約66%)に成功しています(下写真参照)。

RF-ID(博覧会入場券)
RF-ID(博覧会入場券)
高コスト微細プロセスでの受動素子面積を削減した
0.5V動作5GHz低雑音増幅回路
0.5V動作5GHz低雑音増幅回路

社会的ニーズに直接触れることのできる研究環境

今後、半導体集積回路設計技術の応用先としては医療系に興味を持っています。他分野に比べて効率化を進める余地がまだまだ残っており、我々の技術が非常に役に立つはずです。また、グローバルCOE内の他の研究シーズとの融合も進めたいと考えています。現在、片山教授のセンシングデバイスに組み合わせる集積回路を設計中で、超高感度で分子認識が可能なセンシングシステムの実現を目指しています。

本研究室の特徴は、社会人教育や共同研究を通じて、企業の研究者との交流が非常に活発であることです。彼らの生の声、つまり社会的ニーズに直接触れる機会が非常に多いため、幅広い視野で研究を進める環境にあるのではないでしょうか。

子供の頃、電気製品を分解して楽しかったことは覚えています。機械は歯車なんかがあってわかり易いのですが、電気製品は難しくてついつい調べてしまうんです。実際の研究には物理や数学の基礎が大事ですね。