GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

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ナノ材料で穿(うが)つ、デバイス開発の壁

ナノの世界で、「つくる」そして「測る」

これまで半導体は3年で4倍というペースで集積化が進み、微細化の壁が見えてきました。その壁を突き破るには、新しい原理で機能する新デバイスが必要です。シリコン半導体に代わる新材料の開発は熾烈を極めており、カーボンナノチューブ(CNT)やフラーレン等のナノ材料に注目が集まっています。

本研究室では、構造により異なる導電性、鋭く尖った形状、高い強度・柔軟性・対腐食性等が特徴のCNTに着目。その特性をいかした新機能デバイスの試作を行うと共に、超高感度センサー、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エネルギー貯蔵デバイス等に関する研究を進めています。ナノレベルでのものづくりには、デバイス素子間の原子レベルのばらつきに対処するための極限計測技術や表面科学的アプローチが不可欠です。モノをつくることと、測ることは一体ですから。このような観点から、我々は走査トンネル顕微鏡(STM)等の極限計測技術や物質表面での原子挙動に関する研究も進めています。

CNTによる3つのトピックス

我々のCNTの研究に関する最近の成果をご紹介しましょう。

(1)超高感度ガスセンサー

従来型ガスセンサーにはppmレベルの検知能力しかなく、応答が遅く、動作温度も高温(約400℃)だったため、高感度・高速・室温動作という能力が求められていました。我々は既存の基板上にCNTを直接成長させる手法で、超高感度ガスセンサーを開発。NO2検知感度は従来の約1000倍(ppbレベル)で、室温でも高速で応答しました。この成果により博士後期課程学生が応用物理学会の論文奨励賞を受賞し、学会誌の表紙も飾りました。その後、白金修飾したCNTでCOの選択的定量検知に成功(平成20年3月3日付「日刊工業新聞」に記事掲載)。今後、異なる触媒ナノ粒子で修飾したCNTで、超高感度分子認識型センサーの開発を目指します。

(2)FED (Field Emission Display)

薄型ディスプレイとして研究が進むFEDは、蛍光体への電子ビーム照射を利用しており、液晶よりも高速で高輝度という特長を有します。我々は「鋭く尖った形状」「高い化学的安定性」「機械的強靭性」といった特性から、CNTがFEDの電子源として有力と考え、熱CVD 法・基板成長法で作成した垂直配向性を有する均一な長さの高純度CNTを使い、印刷的手法による高性能電子エミッターの試作に成功。検証の結果、実用化に充分な電流密度を達成しました。

片山 光浩 教授
片山 光浩 教授
単層CNT薄膜ガスセンサーの構造
単層CNT薄膜ガスセンサーの構造
ガスセンシングデバイス
ガスセンシングデバイス
単層CNT薄膜
単層CNT薄膜
印刷型CNT エミッター
印刷型CNT エミッター
CNTを用いたFEDの基本構成
CNTを用いたFEDの基本構成
(3)機能性ナノプローブ

探針先端から流す電流で表面原子そのものを画像化できるSTM は、探針先端が細いほど分解能が高くなります。そこで、我々は探針先端部材としてCNTに着目。金属探針とCNT全体を金属膜で覆う独自の手法により、接合部の強度向上と安定した画像を得ることに成功しました。

ナノ材料で起こす、
ニーズとシーズのスパイラルイノベーション

我々は社会に潜んでいる人々の夢や願い、つまりニーズに眼を凝らし続けています。ニーズがあれば必ず誰かが新しいシーズによってそれを達成する一方、革新的なシーズは新しいニーズを拓いていく。こういったニーズとシーズのスパイラルな相互作用で、イノベーションを起こしていきたいと思います。

高校生のときは文系学生だったのですが、手に職をつけようと思って大学は理系へ。卒業論文が有名な学術誌に掲載されてから、研究が面白くなりました。論文を出すだけの研究ではなく、実際に役に立つものをつくりたい気持ちが強いですね。

片山 光浩 教授
片山 光浩 教授
タングステン被膜CNT探針
タングステン被膜CNT探針
タングステン被膜CNT探針STMによる
Si(111)7×7表面
タングステン被膜CNT探針STMによる Si(111)7×7表面