GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

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次世代半導体開発に不可欠な非線形光学結晶の高品質化

社会が求める高品質・高性能な非線形光学結晶

半導体デバイスの微小化が進む中、次世代半導体の開発のためには微小加工あるいはマスクの微小欠陥の検査手法の確立が急務となっています。後者の場合、従来は紫外領域のエキシマレーザーを使っていたわけですが、レーザーの品質が良くないことや有毒ガスの環境への影響等から、非線形光学結晶を用いた新しいレーザーへの社会的ニーズが高まってきています。

我々の研究グループが1993年に発見したCLBOは、現状では上のようなニーズに応え得る唯一の非線形光学結晶※であることから、実用化を目指したCLBO結晶の高品質化の研究を進めています。

※非線形光学結晶:入射光と射出光の波長が異なる結晶

微細加工・検査に不可欠なCLBO

我々は様々な結晶開発を行っていますが、その一つCLBOについての研究内容をご紹介します。

レーザー光源に使えるような結晶を見つけること自体がとても大変なんですが、実は見つけた結晶を実際にレーザーに使えるまで品質を上げることが、泥臭い仕事ながらすごく大事なんです。CLBOを発見したときもその品質や性能が素晴らしいことはわかっていたのですが、強いレーザーを入れるとすぐ壊れてしまった。また紫外光を発生する際、自己加熱を起こし、出力が思うほど上がらなかったりしました。こういった問題を着実に解決していくことで、以下のような研究成果を得ることができました。

吉村 政志 准教授
吉村 政志 准教授
(1)世界最高出力&微細加工

三菱電機との共同研究では、結晶中の水をうまく抜くことで、深紫外レーザー(波長213nm)として世界最高出力(10W)を達成することができました。これは従来の約2倍の出力にあたります。それに加えて、レーザーを細く絞ることで、髪の毛に穴をあける微細加工にも成功しました。このような技術は、携帯電話やノートパソコンの回路の加工に応用可能です。

紫外線レーザーを細く絞る技術は光造形分野にも使うことができます。例えば紫外線で固まる樹脂材料を使うと、レーザーが走ったところだけ樹脂が固まるので、3Dプリンタのようなものができます。立体物の製品開発時における金型による試作品製作プロセスを、大幅に効率化することが可能です。

固体紫外線レーザーによる
髪の毛への微細穴あけ
固体紫外線レーザーによる髪の毛への微細穴あけ
(2)微細欠陥の検査

レーザー波長が短くなってくると微細検査に応用できる特性が出てきます。小さな欠陥を見つけるには短い波長が必要ですから。右写真はニコンとの共同研究で開発した波長193nmの小型レーザーです。これは半導体の露光装置を製造する際の検査に使うために開発されたもので、CLBOを搭載することで小型化を実現できました。これ以外にも、回路のマスク欠陥検査装置へのCLBOの応用も進められています。

(3)医療応用

医学部の眼科の先生と一緒に眼の屈折矯正手術への応用も進めています。実際に、豚の角膜を波長193nmのレーザーで加工する実験にも成功しています。従来病院で使われていたガスレーザーよりも固体レーザーの方が、装置の小型化やコスト面で有利ですし、環境への負荷も小さくできます。

また、レーザー加工により近眼用コンタクトレンズ上に老眼対応部分をつくる研究も行っています。オーダーメイド遠近両用コンタクトですね。

次世代半導体開発の鍵となる研究に携わる悦び

我々が行っていることは単に非線形光学結晶をつくることですが、この結晶で紫外線レーザーをつくることができなければ、微細加工や微小なマスク欠陥の検査が困難になり、次世代半導体の開発が遅れてしまいます。たかが結晶ですが、次世代半導体開発の鍵を握る世界トップクラスの材料を我々のグループがつくっているわけで、その成果次第で半導体産業における将来の日本の立ち位置が変わってくるかもしれない。このような重要な研究に携わることのできる悦びを、我々の研究グループ全員が感じているはずです。

193nm固体レーザー
193nm固体レーザー
豚の角膜のレーザー加工
豚の角膜のレーザー加工

父親が制御関係の設計をする会社を経営していたので、私も自然と電気系に進んでいました。本来、跡取りの立場にいたのですが、制御よりもレーザーの方が面白そうだったので、今の研究分野に進みました。

吉村 政志 准教授
吉村 政志 准教授