GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

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テラヘルツ研究を加速させる超伝導デバイス

テラヘルツ波は光と電波の間の領域

光と電波の中間の周波数をもつテラヘルツ波は、従来、天文学や化合物分析装置等に使われる程度でしたが、近年光源開発が進み、一躍脚光を浴び始めました。

空港での危険物チェック(武器の所持)、非開封検査(薬物、危険物)、さらには大容量データのダウンロードや遠隔医療の実現に役立つ超高速無線通信等、テラヘルツ波は安全で豊かな未来社会の実現に大きな役割を担う技術です。私は超伝導デバイスの高速応答性をテラヘルツ波研究に持ち込み、新たな研究領域の創出に取り組んでいます。

斗内 政吉  教授
斗内 政吉 教授
周波数によるさまざまな基礎・応用分野とテラヘルツ電磁波、テラヘルツフォトニクス、 テラヘルツエレクトロニクスの関係

透かして見る、素早く送る

本研究室で進めるテラヘルツ波研究の2本柱はセンシングと情報通信。

テラヘルツ波を画像化することによりさまざまな分析、検査が可能です。人間の身体は常に熱としてテラヘルツ波を出しているのですが、これを画像化することで衣服の中や下に所持しているモノの形がわかります。この技術はテロ抑止技術として、既に一部の空港に導入されています。また人体に無害で透過性を有するテラヘルツ波の照射により、壁の向こうになにがあるか、封筒の中身は麻薬なのか小麦粉なのか、非破壊/非開封検査が可能になります。この分野で本研究室は世界的な研究成果として大規模集積回路(LSI)の欠陥特定手法の確立に成功しています。LSIに光を照射した際の半導体内での電子移動をテラヘルツ波に変換。これを画像化することで断線箇所を容易に判別できるようにしたのです。LSIの品質向上(低消費電力化)に貢献できるこの技術を、企業との連携により3年後には実用化したいと思っています。

一方、情報通信分野においては無線通信の高速化という課題に、テラヘルツ波の応用が進みつつあります。最近NTTが開発した0.1THzの無線なら、一般DVDレベルのデータを数秒でダウンロード可能です。今の無線技術では約10分必要ですから、約100倍の速度を実現できることになります。この高速情報通信技術は遠隔医療の現場で、高解像度手術画像の伝達にも役立つはずです。加えて、テラヘルツ波による高速情報通信を実現できれば、今やパンク状態にあるインターネット環境も改善されるのではないでしょうか。

超伝導デバイスが加速するテラヘルツ研究

ただし、従来の電子デバイスではテラヘルツ波レベルの速度で光信号を電気信号に変換することはできません。そこで、本研究室では電子ではなく磁気信号を用いる超伝導デバイスを、高速信号変換デバイスとしてテラヘルツ波技術にいかす研究を進めています。超伝導とテラヘルツ技術のコラボレーションは、高速かつ低消費電力の情報通信システムの実現に向けた大きな推進力になるはずです。

新たな学問領域の創成へ

安心・安全・快適な社会環境の実現への貢献が期待されるテラヘルツ技術ですが、その研究開発はひとつの研究室では困難で、国や他の研究機関との連携が不可欠です。私はこのような大きな枠組みづくりにも率先して取り組み、さまざまな分野を横糸のようにつなぐテラヘルツ技術の発展に貢献すべく努力しています。しかし、テラヘルツ波の応用分野の広さや可能性に対して、研究者の絶対数が足りていないのが現状です。もともとの学問領域にとらわれることなく、「やってみよう!」「面白いことをしたい」という気持ちを持った仲間を求めています。

もともとあまり優等生な方ではなく、人のやってないことをやってきました。対象はなんでもいいんです。たまたまサイエンスへの興味と周辺環境の影響で今この分野にいるわけですが、企業の方からは「絶対あなたは人事に向いてる」とかいわれます。