GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

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自然界がお手本、有機エレクトロニクスの世界

自然界のナノテクノロジーに習う

コンピュータの大事な部分はシリコンでできています。一方、我々をはじめ生物は、主に炭素と水素などの有機分子からできていますが、ものすごいポテンシャルを持っていて、コンピュータ以上の機能を発揮します。この分子を構成する炭素などの原子の組み合わせは無限で、結合のしかたによってダイヤにも炭にも、はたまた金属のようなグラファイトにもなります。分子の設計次第で、まだまだ未知の物質ができる可能性もあるのです。

さらに、この分子は、それぞれが個々に素晴らしい機能を持つだけでなく、自分たちの力で自発的に並んでとても複雑なナノメートルサイズの秩序や構造を作っていきます。これは現在のエレクトロニクスを支えるナノテクノロジーそのものと言えます。

1つの例が、液晶とコガネムシの関係。実は両者のしくみは非常に似ています。コガネムシの外殻の断面は、200nmほどの周期で分子が螺旋状に並んでおり、そこを進む光と反射される光とが強めあったり打ち消しあったりする(干渉する)ことで特定の色が強調されて見えます。物質に色がついているのではなく、構造によって色が見えるというわけです。このような「構造色」は、アンモナイトや法隆寺に伝わる玉虫厨子を見ても分かるように、1億年経っても色あせることがありません。この構造を作っているのが、コレステリック液晶と呼ばれる液晶と同じような分子の自発的に並ぶ力なのです。

我々は、このような自然界のナノテクノロジーをお手本に、電子デバイスや光デバイスに利用可能な「かしこい」有機分子材料の研究を進めています。

尾崎 雅則 教授
尾崎 雅則 教授
コガネムシの輝き
コガネムシの輝き

液晶の魅力

液晶の面白いところは、電圧、温度などの条件を変えることによって、分子が勝手に秩序をつくったり向きを変えたりするところでしょう。同一方向にそろったり、ねじれたり、三次元になったりと様々な構造をつくり、それが優れた機能を持つ。固体と違って融通がきき、無数の構造を生み出す可能性を秘めています。つまり、現在の液晶テレビなどのような応用以外にも、ナノテクノロジーで実現できる材料やデバイスへも発展する可能性があります。

例えば、光を「遮る」のではなく、「遅くし」たり「止める」ことが出来る、全く新しい性質を有する「光」を創出できるフォトニック結晶というものも、液晶をつかって容易に実現したり、その特性にさらに機能性を付与することも可能となってくるのです。

そのような液晶の新しい魅力を開拓しようとしているところです。

有機物から電子デバイスを

この他にも「分子でエレクトロニクスをつくる」をキーワードに様々な研究を進めています。有機ELから有機レーザーへ、有機トランジスタから有機太陽電池まで、ソフトでスマートな分子のポテンシャルを、エレクトロニクスやフォトニクスの分野へ展開するための材料デバイスを研究しています。

大学の重要な役割は、「夢」を与えることだと思っています。今の堅いシリコンだけでなく、柔らかい有機物でつくられたコンピュータや携帯電話を想像してみてください。絵が動く雑誌グラビアやカレンダー、Tシャツなど、魅力ある応用分野が広がっています。

コレステリック液晶で実現した
フレキシブルなレーザー
コレステリック液晶で実現した フレキシブルなレーザー

大学の学生時代は合気道に熱中していました。その時培われた三つの力が今の研究を支えてくれていると思っています。すなわち、体力、組織の中でのコミュニケーション力、そして、何ごともバカになってのめり込む馬力でしょうか。