GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

HOME > 拠点目的・概要 > グローバルCOE研究紹介 >

独創的結晶化技術の開発

異分野の発想でCLBOを発見

本研究室のキーワードは「結晶化」。レーザーに使う無機物から新薬開発に役立つ蛋白質まで、幅広い分野に及ぶ結晶化関連の研究を進めています。私は学生の頃はダイヤモンドを半導体として使う研究をやっていたわけですが、レーザー関連の結晶が専門の佐々木先生のもとで助手として研究を始めたのが結晶との出会いでした。当時、結晶のことがよくわからなかったこともあり、まずは研究室で扱っていたLBOとCBOをとりあえず混ぜてみたところ、偶然にも全く新しい構造のCLBOを発見したのです。これは完璧な新発見。LBOとCBOの構造は全く異なるので普通なら混ぜようと思わないのですが、半導体の研究者は何でもすぐ混ぜたがる。この発見で結晶化の研究に勢いがつきました。

独自の結晶化技術の生い立ち

我々の主な結晶化技術の生い立ちをご紹介しましょう。

(1)混ぜる(撹拌)

我々が発見したCLBOは特性は良かったが、壊れやすいという欠点がありました。強度を上げるためにいろいろ試しましたが、なかなかうまくいかない。そんなある日、お風呂の中で「かき混ぜたら気持ちええなあ・・・結晶もかき混ぜたら気持ちええんちゃうかなあ」と思ったわけです。そして、実際に結晶化の過程で溶液を撹拌してみると、結晶の強度が上がり、品質が3倍も向上したのです。

(2)溝つき斜面

無機だけでなく、有機結晶にも挑戦しました。ただ、結晶の核はできるのですが、容器面にぺたっと寝てしまい品質がよくならない。立った状態で成長する方が結晶の品質は上がるのです。そこで、「なんとか結晶を立てないかん」と、溝を刻んだ板を溶液中に斜めに置いてみると、斜面を滑り落ちてくる小さな結晶が溝でコテッと立つことを発見したわけです。非常に単純な発想ですが、この技術は阪大の特許として登録され、この結晶によりテラヘルツ波の実用化が見えてきました。

(3)レーザー照射

(1)(2)のような結晶化技術を産業化して世の中の役に立てるには、結晶発生時期の制御が必要になってきます。そこで、結晶成長の本を読んでみたら『刺激』が大事やと書いてある。その時、頭に浮かんだことは「うちの研究室にはレーザーがある!これは刺激やろ・・」。実際に有機の溶液にレーザーを当ててみると、結構結晶がでた。本当に刺激になったわけです。

このように我々の研究手法は問題解決型。眼前の問題を解決していった結果、新技術がうまれました。

森 勇介 教授
森 勇介 教授
CLBO結晶
CLBO結晶
斜面を利用したDAST結晶の核発生位置制御法
斜面を利用したDAST結晶の核発生位置制御法

蛋白質の結晶化から創晶へ

光以外にも結晶化技術の面白い使い道はないかと考えていたとき、雑誌で「これからはタンパク質の時代、困難な結晶化」という記事を目にしたのが蛋白質の結晶化に取り組み出すきっかけでした。もともと蛋白質の結晶化というのは、ジーッと静かにしておくものとされており、撹拌してレーザーを当てるなんて滅茶苦茶だと言われました。しかし、やってみると結晶がでた。おまけにそんなとき、蛋白質の結晶化をやっている友人に生協でばったり会った。彼のプロスタグランジンという蛋白質は従来、結晶化まで半年もかかっていたのに、レーザーを当てたら2日で結晶がでた。「これはおもろいな!」と、口コミでいろんな研究者とのネットワークが広がり、最終的に大学発ベンチャー「株式会社創晶」の起業に繋がりました。

心の持ち方で結果が決まる

できないと思われていたことができるようになる瞬間、これは本当に面白い。高いレベルで、言うこと、やること、思っていることが一致したら、多分自然に結果はついてくると思います。それを楽しみに精進することが大事。できると思っていればなんでも楽しくなるはずです。

高野山の大阿闍梨の影響で、約20年間、毎朝冷水をかぶることから1日をスタート。皆の心の持ち方を前向きにする一助として、心理カウンセラーの先生にも研究室に参画いただいています。

森教授と心理カウンセラーの根岸特任研究員
森教授と心理カウンセラーの根岸特任研究員