GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

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第3世代レーザーダイオードの開発

頭打ちの半導体レーザーに技術革新を

光ファイバー通信に使われている半導体レーザーは、10G(ギガ)bps程度の速度までしか動かせません。幹線系では、発光波長の異なるレーザーを複数使用して超大容量の通信を実現しています。しかし、その技術はとても高価で、私たちのパソコンで用いるLAN(ラン)系には使用できません。ムーアの法則によると、RAM(メモリー容量)が大きくなるとCPU(データ処理装置)も速くなり、それに応じて通信速度も速くなるはずですが、現時点では技術的な壁にぶつかっており、実質的に2,000年の頃とあまり変わっていません。このような背景のもと、我々は次世代の超高速インターネットのための技術革新を目指し、GaInNAsとフォトニック結晶を組み合わせた超高速レーザーデバイスの研究を行っています。

近藤 正彦 教授
近藤 正彦 教授
ムーアの法則と幹線系/LAN系の通信速度/容量推移
ムーアの法則と幹線系/LAN系の通信速度/容量推移

目指すのは第3世代レーザー。第1世代ではミラー品質が悪く、第2世代レーザーは、ある瞬間しか増幅できないので、性能が限られていました。しかし、我々の考える第3世代レーザーでは、複数波長のレーザー光を自由に出すことができるため、理論的には従来の約100倍、1T(テラ)bpsの大容量通信も実現できるはずです。

オリジナルな新材料と構造による、第3世代レーザー

我々が考えているレーザー発振器の構造を下に示します。

ナノテクノロジーにより半導体に200ナノメートル程度の大きさの空気孔をあけた構造のフォトニック結晶を使います。このような構造をとれば、穴の無い部分に光を閉じ込めることができ、レーザーの共振器として使うことができます。その近くに光導波路をつくると、ここに光が漏れ出して光導波路の方向に光がでてきます。つまり、複数のレーザーを簡単に低コストで集積できるわけです。さらに、少し設計を変えることで、それぞれの共振器から波長の異なる複数のレーザー光を取り出すことも可能です。但し、穴の上下から光が漏れないように低屈折率の絶縁体で挟み込む必要がある一方、発光源であるGaInNAsへ電流を流す必要もあります。我々はAlAsでこの困難な課題を克服しようとしています。AlAsの一部のAsを酸素で置換し屈折率の低いAlOとすることで、光の閉じ込めと導電という2つの性能を実現できるはずです。

我々の研究室ではこのようなフォトニックデバイスの設計・シミュレーションからナノ加工まで、様々な工程での研究を行い、今は第3世代デバイスの試作の段階にきています。デバイスの場合、実際につくって性能を評価しないことには、何も始まりません。そして、試作品で良い結果が出ても実用化までは5-10年必要ですが、このレーザーでは波長の違うレーザーの集積により従来の約100倍の通信容量を実現できるわけで、これは充分魅力的でインパクトが強い技術革新だといえるでしょう。

多くの空気孔を有するレーザー発信器の構造
多くの空気孔を有するレーザー発信器の構造

時間がかかっても自分オリジナルな研究を

既存材料や手法の改良というよりも、時間がかかっても新しいことをしたいという気持ちが強い。新材料もつくりたいし、全く新しいレーザーの構造もつくりたい。そして、頭打ちになりつつある半導体レーザー技術に風穴を開けたいと思っています。高性能で安価なレーザー技術が社会全体に普及し、一般家庭でも超高速通信が自由に使えるようになればいいですね。


GaInNAs:近藤教授が1995年に創成した発光素子材

昔から、分野を問わず自分オリジナルな仕事をしてみたいという気持ちを持っていました。そんな視点で自分を見つめてみた場合、私の場合は科学が最も有望だった。時間がかかっても、誰もやっていないことをやりたいと思います。

近藤 正彦 教授
近藤 正彦 教授