GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

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高エネルギー密度を操り、ブレークスルーへ挑む

常にブレークスルーを目指す研究姿勢

我々は常にブレークスルーを目指しています。例えばレーザー核融合では、高速点火という新しい点火方式にいち早く着目し、まったく新しい幾何学配置を発明することでブレークスルーをもたらしました。今は、核融合の高速点火で養った技術を別の分野のブレークスルーに発展させようというのが我々の研究です。その大もとに流れているのは「高エネルギー密度」という、一般には聞き慣れない概念です。しかし、実際は多くの技術が高エネルギー密度に関係しています。

一つの例が、小型化が進むパソコン。実は技術的にはもっともっと小さくできるのに、工業的にはできない。その理由は熱。熱をどうやって逃がすかが鍵になるわけです。サイズが小さくなるに従って、エネルギー密度が上昇し、それに伴う熱でパソコンが壊れてしまう。しかし、見方を変えて、光とか電子にとって壊れているかを考えてみると、ごく短い時間においては、パソコンは壊れていなくて機能するのです。人間の感覚で壊れていると思っても、光や電子には全然関係ない。

雷千個分の電子ビームを操る
プラズマフォトニックデバイス

もっと具体的に、プラズマの鏡を考えてみましょう。プラズマというのは鏡として使えるのです。我々が普段使っている金属鏡の表面は、電子の池の静かな水面のようなものです。一方、プラズマの表面は、温度が高くて電子の水面に大波が立っているようなものだから光なんて反射しないというのが常識でした。しかし、プラズマを1兆分の1秒ぐらいの短時間でつくってやれば、最初の一瞬は表面の電子がじっとしていて静かな水面のようになります。電子や光の単位で考えたら、プラズマの表面状態は滑らかなわけです。

プラズマが鏡になってなにがうれしいかというと、プラズマ自体のエネルギーが高いため、高いエネルギー密度を持つ光でも跳ね返すことができる。金属の鏡なら壊れてしまいます。そして、強い鏡があればエネルギー密度の高い光を使うことができるので、装置全体を小さくできるんです。例えば、癌治療用のイオンビームの場合、従来のレーザー強度では100mぐらいの装置になってしまいますが、エネルギー密度を上げたレーザーを使えば、10分の1のスケールでできるはず。光はいくらでも集めることができるから、光でいろんなものを制御してエネルギー密度を上げていけば、モノを小さくできるはずです。

右図は我々が開発した高エネルギープラズマフォトニックデバイスの1つです。円錐形金属コーンの先端に光を集めて、雷1,000個分の高エネルギーファイバーで光を誘導するように、電子ビームをワイヤで誘導できます。我々の感覚ではワイヤは溶けて無くなったように見えますが、電子から見たら通常の状態と同じなのです。

観ながら創ることのできる製造装置を目指して

我々の目標の1つは、高エネルギーの光を制御することで、現状のシステムを極端に小さくすること。もう1つは高エネルギーレーザーによる超高圧力の世界で、今までに無かった新規物質をつくること。この手法で創成した金属シリコンは常圧でも金属構造を維持することもわかってきました。次は炭素を金属化して、ダイヤモンドより硬くて、極めて導電性が高い金属炭素の創成を目指しています。最終的には、この2つの目標を融合してSPring8をぎゅーっと小さくしたような装置を阪大につくりたい。我々が新しいものを創りながら同時にそれを調べることができる、そんな製造システムを創るのが夢ですね。

我々はイノベーション(革新)というよりもインベンション(発明)を目指し、教科書の1ページ目を創ろうとしています。これが、本研究室の教授室に本が非常に少ない理由かもしれません。

兒玉 了祐 教授
兒玉 了祐 教授
尾崎 典雅 助教
尾崎 典雅 助教
高エネルギー
プラズマフォトニックデバイス
高エネルギープラズマフォトニックデバイス

子供の頃は社会、それも歴史が好きでした。不思議とアマチュア無線などには興味なかったですね。
(兒玉 了祐 教授)