GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

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複眼的な教育研究

GaNの共同研究がきっかけで大学へ

松下電器産業に勤めていた私が大学に戻るきっかけは、佐々木先生や森先生と行ったGaN(窒化ガリウム結晶:携帯電話などで使われている発光ダイオードや、次世代パワーデバイスの基板として期待されている結晶)の産学連携研究。阪大フロンティア研究機構でのマッチングファンド※を使って、松下以外にも関西の大手企業に声をかけて研究費を集め、GaN結晶成長装置の1号機をつくりあげました。そんな研究の芽が出かかっていた時期に、研究関連の部署から離れる異動が打診されたので、いろいろ悩んだ結果、大阪大学に戻ることにしました。

大学に戻ってからは、産業界の力を借りながら実践的な学生教育に取り組んできました。そして本グローバルCOEの教育理念と、私が目指す教育の方向性が同じだったこともあり、産学連携教育という視点でお手伝いさせていただくようになりました。

※マッチングファンド:

産学連携研究において、企業が出す研究資金に応じ、大学も資金を提供し、より大きな研究資金を獲得する制度。

産学連携研究のツボ

私が松下にいたとき、大阪大学と包括契約で産学連携研究が10テーマぐらい走りましたが、期待する成果を実現することは、難しい状況にありました。最初は大学の学生と企業の担当者が直接やり取りして研究を進めるわけですが、そのうち企業のエゴが強く出てくると、当然大学側は偉い先生が前に出て学生を守ろうとする。その結果、研究現場の学生のやっていることや想いが企業に正確に伝わらなくなって、研究がうまく進まなくなるのです。

知財を守りながら産業化を急ぐ企業と論文や学会発表を急ぐ大学、その利害関係の調整が最も難しい。そこがうまくいかないと真の産学連携研究とはいえません。企業が何を望んで研究を進めているのかを知ることも重要です。

一方、企業側は特許、特許とばかり言っていないで、学生や研究者がどんな思いで研究しているのかを理解する努力をし、かれらのモチベーションを上げる工夫をするべきです。双方がエゴをぶつけ合っても、大きな成果は得られません。大学の眼と企業の眼、両方を持つ私のような調整役がいることで、大学と企業が、お互いを近くに感じることができればいいと思っています。

産も学もメリットが大きい産学連携教育

研究に加え、産学連携教育にも力を入れています。というのも、我々が学生の頃は卒業後の社会人生活や日本社会に対する期待感がありましたが、今の学生にとって社会人生活はバラ色でなく、日本に対する閉塞感や、グローバルに開かれた社会への不安感の方が大きいように思ったからです。企業の力を借りて、学生に勇気や意欲を持ってもらうことができれば、大学にとっても企業にとってもメリットは大きいはずです。

実際、私が企画した社会人基礎力プログラムで、企業人から「君、優秀やね」、「君のこと、待ってるよ」と言われた瞬間、学生の表情がぱっと明るくなる。産学連携をうまく利用して、学生が社会の生の声を知る場面づくりをできればうれしいです。学生自身が、社会は自分達のことを待ってくれているとか、自分達の活躍する場があるんだと気付いてくれれば、あとは勝手に勉強して研究してくれるはずですから。その部分は昔も今も変わっていないはずです。

最近は、メーカーへ就職しない学生が増えていると聞きますが、それはメーカーで働く本当の醍醐味が伝わっていないからだと思います。大学の現場できっちり研究をしている学生に、企業の正確な情報を持ってくるのが私の仕事です。学生には企業の期待する人間像を、研究を通して伝えたいと思います。

教育も研究もバランスよく

40歳までの企業勤めで身につけた知恵を学生にうまく伝えるとともに、自分の研究テーマを産学連携で実用化開発までサポートし、日本企業の新しい事業創出につなげたいと思っています。 また、産学連携を通した教育プログラムも実施していきたいと思っています。教育も研究もバランスが重要ですから・・・。

最後になりましたが、今回のグローバルCOEを通じて、学生には海外の研究者や企業の方とどんどん話をして、グローバルな社会からの期待感を感じて欲しい。そのためにも、私は学生が自分達の能力に気付くように積極的にサポートしていきたいと思います。

北岡 康夫 教授
北岡 康夫 教授

私の根本にあるのは人づくり。
今は結晶づくりという手段を通じて新しい市場創造と、社会で本当に活躍できる人材育成をやっています。