GCOE CEDI Osaka Univ.

大阪大学グローバルCOEプログラム Center for Electronic Devices Innovation

大阪大学グローバルCOEプログラム 次世代電子デバイス教育研究開発拠点

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安心・安全のためのセンシング技術の開発

見えないモノを見るための研究

電波や磁気を利用することで、目に見えない場所における特定物質の有無を検知することが可能です。例えば、地中の地雷や封印梱包中の不正薬物さらには金属管内部の傷等を、実際に見ることなく検知することが技術的に可能なのです。我々はこのような技術の実用化を目指し、核スピンや超伝導に関する技術をいかしたセンシング技術を開発しています。

爆薬や不正薬物のセンシング技術

従来から、紛争地域における復興支援のための効率的地雷探知技術への社会的ニーズが存在し、最近ではテロ対策としての爆発物検知技術への深刻なニーズも世界的に認識されています。このような安全で安心な生活のための社会的ニーズに応えるために、我々は核四極共鳴(NQR)現象を利用した、爆薬や不正薬物の検知技術の開発に取り組んでいます。

特定の物質に電波をあてると核スピン状態に変化が起こり、電波を止めてから僅かな時間放出される電波を検出することで、その物質が何かを見分けることができます。例えていうと、電波で分子の指紋を見るような技術です。このNQRセンシング技術では、N、Na、Al、Clなどを含む化合物を検知できますが、我々が検知対象としているのは爆発物や麻薬などに含まれるN原子。従来の金属探知器を用いた地雷探知の場合は鉄釘などの金属ゴミにも反応してしまい、金属探知器が反応した場所に地雷がある確率は大体千分の1程度でした。しかし、我々のNQRセンサー(N センサー)を組み合わせて使うことで、地雷撤去の効率が飛躍的に向上するはずです。地雷探知に関しては試作機のフィールドテスト段階まで進んでおり、検知対象爆薬の種類を増やすことで実用化を進めていきたいと考えています。

NQRセンサーは地雷探知以外にも、爆破テロや不正薬物取引を防ぐための、手荷物検査等にも有効です。鞄を開けること無く、内部の封筒内の物質を砂糖か小麦粉か不正薬物か、見分けることができるのです。

糸崎 秀夫 教授
糸崎 秀夫 教授
牧 哲朗 助教
牧 哲朗 助教
イエロークリーンルーム
イエロークリーンルーム
NQR地雷探知機フィールド調査 NQR地雷探知機試作品
NQR地雷探知機フィールド調査 NQR地雷探知機試作品

金属の見えない部分の非破壊検査技術

我々は超伝導研究で得た知見のエレクトロニクス分野への応用展開として、超高感度磁気センサー(SQUID※※)の開発を進めています。超伝導体を利用して外部の微弱な磁場変化を検出するSQUIDの性能は、従来の磁気センサーの100倍で、地磁気の5千万分の1以下の微弱磁場を検出できます。この技術を実用化できれば、金属の非破壊検査や、食品パッケージ内の金属異物混入検査、さらにはレアメタルの鉱床検査にも応用できるはずです。さらに、人体の生体信号電流に伴う磁場を体外から観察できるので、脳や心臓の検査への応用も期待されています。非接触で微弱磁場を検知できるSQUIDを、今後新デバイスの評価技術としても発展させたいと考えています。

デバイス開発から試作製品のフィールドテストまで

20世紀の技術革新の1つのキーワードがシリコン半導体でしたが、21世紀の技術革新にもさまざまなキーワードが出てくるはずです。我々は「超伝導」や「核スピン」といった、21世紀におけるエレクトロニクス技術革新のキーワードになり得るテーマを研究しています。デバイス開発から試作製品のフィールドテストまで、幅広い階層の研究と体験を通じ、従来にない新技術の確立を目指したい。そして、安全・安心に対する社会的ニーズに応えていきたいと思います。

NQR: Nuclear Quadrupole Resonance
※※SQUID: Superconducting Quantum Interference Device

科学技術の急速な発展が実感できた時代に育ったから科学の道に進んだのかもしれません。高校生の頃は初期のブルーバックスをよく読んでいて、物理に非常に興味を持ったことを覚えています。

糸崎 秀夫 教授
糸崎 秀夫 教授
鉄板欠陥の磁気画像(SQUID)
鉄板欠陥の磁気画像(SQUID)