平成21年度 実績報告書
95/156

教育研究プラットフォームIDER研究成果/ポストドクター・GCOE研究員溶 液 プ ロ セ ス に よ る 低 分 子 有 機 E L 素 子 の 作 製 及 び 発 光 特 性 に 関 す る 研 究 笠間 大輔 大阪大学大学院 先端科学イノベーションセンター 大森 研究室 ア ブ ス ト ラ ク ト プリンタブル発光素子の実現に向け、溶液プロセスにより成膜可能な低分子材料に着目して、有機E L素子の作製とその発光特性に関して研究を行なった。溶液プロセスにより成膜可能な移動度の異なる 数種類の低分子材料をホストとして用い、発光色素をドープすることで、低分子有機 EL 素子の作製の検 討を行った。成膜過程の異なるにより生じる発光層の膜質の異なりを最適化することで、真空蒸着で作 製した素子と同程度の電流効率を有する素子の作製が可能となった。 有機 EL 素子は素子材料に色素等の低分子系と、導電性高分子等の高分子材料を用いる高分子系 に主に大別される。低分子系の有機 EL 素子は、素子材料の高純度精製が可能であることから、比較的 容易に高性能な素子を作製することができ、国内では、初期の段階から、多くの研究がなされてきた。し かしながら、低分子系有機 EL 素子は、素子作製に、真空プロセスである有機分子線蒸着法を用いるた め、製造プロセスが高コスト化してしまう傾向がある。そのため、より簡便な溶液プロセスで大面積素子の 作製可能なプリンタブル有機発光素子の高機能化が期待される。そこで、本研究では、溶液プロセスに より成膜可能な移動度の異なる数種類の低分子材料をホストとして用いた有機EL素子の作製及び発光 特性の評価を行った。1例として図1に正孔移動度が 10 - 4 cm 2 /Vs オーダーのホスト材料に対して、黄色発 光を示す発光色素であるルブレンをドープして作製した素子特性を示 す。ルブレンのドープ濃度や溶液 の成膜条件を最適化することで、有機EL素子は、最高電流効率7 cd/A を示し、真空蒸着法で作製した 素子と同程度の効率を有する素子が作製できた。また、本研究では、高速応答可能な素子の実現に向 け、素子の過渡応答特性評価も行い、成膜された膜質の違いにより素子の応答特性が大きく影響を受け ることが示唆された。 図1 作製した低分子有機EL素子の電流効率の電流密度依存性 91

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です