平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/ポストドクター・GCOE研究員図1 各評価者の代替案総合評価値 階 層 分 析 法 を 用 い た 次 世 代 パ ワ ー デ バ イ ス 開 発 用 途 に 関 す る 多 角 的 検 討 大曲 祐子 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 舟木 研究室 ア ブ ス ト ラ ク ト パワーデバイスの応用分野は多岐に渡っており,効率的な開発のためには用途を絞った開発が必要 である.そこで本研究では,定量的な評価が困難な評価項目を含めた多角的な分析が可能な階層分析 法を用いて,次世代パワーデバイスの開発に注力すべき将来用途に関する検討を行うことを目的とする. 複数評価者による分析を行った結果,評価基準の重要度は評価者によって大きく異なっているものの, 将来用途として最も評価値の高い代替案は自動車であり,多くの評価者において家電機器が次に有望 であることがわかった.さらに,評価指標の重要度が変化した場 合の感度解析を行った結果,社会的要 因の重要度が高くなるにつれて,自動車の重要性が高まる傾向にあることが分かった. パワーデバイスの応用分野は多岐に渡っており,デバイスに要求される性能は利用用途別に異なるた め,効率的な開発には用途を絞った開発が必要である.一方,パワーデバイスの導入による効果は,単 純な効率向上にとどまらない.特に静音性向上やシステムのコンパクト化によるデザイン自由度の向上な ど定量的な評価が困難な項目もある.そこで本研究では,定量的な評価が困難な評価項目を含めた多 角的な分析が可能な階層分析法を 用いて,次世代パワーデバイスの開発に注力すべき開発用途につい て検討した. 階層分析法は,数学的解析と主観的判断を考慮して,最終目標に対し代替案の中から最も妥当と考 えられる代替案を選択する手法である.最終目標ならびに評価項目,代替案を定義して,各評価項目の 重要度を算出し,代替案の評価値を求める.最終目標として「次世代パワーデバイスの望ましい将来用 途」を設定し,将来用途の代替案としては,自動車,発電,電力送電,家電機器,産業の5つの分野を考 えた.評価基準は 2 階層とし,上位レベルでは,技術的要因,社会的要因,経済 的要因を設定し,下位レ ベルでデザインの自由度や静音性といった具体的には数値化が困難な評価項目も考慮した. 評価者 9 名の結果について分析した結果,全ての評価者について最も評価値の高い代替案は自動車 であることが確認できた(図1).次に有望な用途については評価者全員の意見の一致は見られなかった が,多くの評価者において家電機器が次に有望であることがわかった.最終的な代替案の評価値は各評 価基準の重要度によって影響を受ける.代替案の評価値 では非常に良く似た結果となっている評価者間においても, 評価基準の重要度が異なるこ とがわかった. さらに,評価指標の重要度が変化した場合の感度解析 を行った.今後の環境問題の深刻化などにより,社会的要 因の重要度が高くなる可能性があるため,社会的要因と他 の技術的要因・経済的要因の重要度が変わった場合の影 響について分析した.複数評価者による分析では,社会的 要因の重要度が高くなるにつれて,自動車の重要性が高 まる傾向にあることがわかった.また,社会的要因の重要度 に対する代替案の感度は,評価者によって異なることを確認した. 本研究では,階層分析法を用いて次世代パワーデバイスの開発に注力すべき将来用途について検討 した.さらに,評価指標の重要度が変化した場合の感度解析についても検討した. 90

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