平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/IDERユニット様式4グローバルCOEプログラム-次世代電子デバイス教育研究開発拠点-平成21年度IDERユニット研究成果報告書1.IDERユニット名称等ふりがなむらいりょうた役職ユニットリーダーの氏名・役職村井良多D3所属(部局・専攻・講座)工学研究科電気電子情報工学専攻機能性材料創製領域連絡先TEL06-6879-7706e-mailmurai@cryst.eei.eng.osaka-u.ac.jpユニット名称(日本語名および英語名の両者を記入)(日本語)有機・高分子材料の高品質結晶育成技術の開発(英語)Development of crystallization techniques of organic and macromolecularmaterials2.研究開発の概要および平成21年度の研究進捗状況と成果提案した研究開発課題の背景、目的、および年度当初の計画について記入してください。また、提案した研究内容に関する進捗状況、成果について自由に記述してください。次世代の電子デバイス材料として注目を集める有機・高分子材料の高品質単結晶を作製するため、本ユニットでは、溶液攪拌やレーザー誘起核発生などの新しい結晶育成技術の開発に取り組んでいる。また、結晶成長条件の最適化や評価のため、高分解能液中観察原子間力顕微鏡の開発を行った。以下に本年度の成果をまとめる。溶液粘性制御によるフェムト秒レーザー誘起核発生技術の高度化昨年の研究より、レーザー照射時に発生するキャビテーションが分子を移動させ、局所的に分子高濃度領域を形成し、核発生を促すことが明らかになった。本年は、高濃度領域の緩和時間を長くして核発生確率を高めるため、溶液のゲル化を試みた。アガロースを添加して溶液をゲル化し、レーザー照射を行うことで、ニワトリ卵白リゾチームの結晶化において、通常の低粘性溶液の5分の1以下の低過飽和度条件下で核発生を誘起することに成功した。また、細胞増殖必須因子SAT(図1)や膜タンパク質AcrBといった、難結晶化タンパク質においても、溶液をゲル化することにより、より低過飽和度で核発生を誘起できることを明らかにした。さらに、アガロース添加による溶液のゲル化そのものが核発生を促進することを新たに見出した。以上の結果から、溶液のゲル化とフェムト秒レーザー照射の組み合わせは、核発生促進に大きく貢献する技術であると考えられる液中AFMによる結晶の表面観察本年度は「可溶性結晶のAFM観察手法の確立」の「有機・高分子材料の液中AFM観察」を行った。有機・高分子材料に限らず可溶性の結晶は幅広く存在するが、これまで液中FM-AFMでは難溶性結晶しか観察されていなかった。そこで、昨年可溶性結晶であるタンパク質結晶(リゾチーム)の観察に成功した方法を用い、様々な可溶性結晶のAFM観察を行った。探針で表面を走査するAFMにとって、可溶性結晶の観察で問題となるのは結晶が成長・溶解することによる結晶面の変化である。観察のためには成長・溶解速度を抑える必要があるが、どんなに精度良く飽和溶液を作成してもせいぜい1Å/sec.のオーダーぐらいまでしか面成長速度は抑えられない。そこで、観察溶液があえて蒸発するような非密閉観察セルを用いるて、徐々に溶液濃度が高まる溶液条件下で観察を行った。この時の面成長速度は0.01Å/sec.のオーダーと2桁抑制することに成功している。この手法を用い、成長速度の速い代表として単純な構造を持つ無機結晶であるアルカリハライドの原子分解能観察に成功し、他にもいくつかの無機・有機結晶の原子・分子分解能観察に成功した。前述した可溶性結晶のAFM観察手法を用いて、最も単純なアミノ酸であるグリシン単結晶表面を溶液中で分子分解能観察することに成功した。グリシンは光学異性体を持たない唯一のアミノ酸であるため、今後光学異性体を持つアミノ酸を観察することで、D体結晶、L体結晶の区別や、それらの分離につながるような応用例が考えられる。また、昨年に引き続きリゾチーム結晶の分子分解能観察を行い、欠陥や吸着分子の観察やステップがやってきた時の表面変化などをとらえることに成功している。その成果の一部は、国際誌に投稿済みである。84

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