平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/IDERユニット様式4グローバルCOEプログラム -次世代電子デバイス教育研究開発拠点- 平成21年度 IDERユニット研究成果報告書 1.IDERユニット名称等 ふりがな まき てつろう役職ユニットリーダーの氏名・役職 牧 哲朗助 教所属 (部局・専攻・講座) 基礎工学研究科・システム創成専攻電子光科学領域・糸崎研究室連絡先 TEL 06-6850-6311 e-mail maki@ee.es.osaka-u.ac.jp (日本語) 結晶粒界接合特性改善による高品質高温超伝導SQUID開発 ユニット名称 (日本語名および英語名の両者を記入) (英語) Improvement of GB junction properties and development of high quality HTS-SQUID 2.研究開発の概要および平成21年度の研究進捗状況と成果 提案した研究開発課題の背景、目的、および年度当初の計画について記入してください。また、提案した研究内容に関する進捗状況、成果について自由に記述してください。 背景・目的・年度当初計画 SQUID(超伝導量子干渉素子)は超伝導リングとジョセフソン接合から構成される超高感度磁気センサである.このジョセフソン接合の品質によってSQUID磁気感度特性は大きく影響を受ける.前年度まで明らかにしてきた,バイクリスタル結晶粒界に存在する欠陥について,今年度は,SQUID磁気センサ特性との関連を明らかにできるよう,結晶粒界欠陥とジョセフソン接合特性評価に重点を置いて研究を進めた. 平成21年度の進捗状況・成果 YBCO薄膜結晶粒界で観察された欠陥が,電気特性にどのような影響を与えるかを評価するために,STOバイクリスタル基板結晶上にYBCO薄膜接合アレイを形成し,接合部に存在する欠陥と電気特性との関連について検討を行った.2種のSTO基板上に作製したYBCO薄膜接合アレイ(サンプル#01,#02)のR-T特性を計測し,対応する接合部のモフォロジーをFE-SEMにより観察した.作製したYBCO薄膜接合アレイ(サンプル#01)のR-T特性結果を図1に示す.R-T計測を行った接合部の結晶粒界近傍のFE-SEM像を図2に示す.FE-SEM像から,図2 (b-1)に観察されるように,接合部b-1は結晶粒界に沿って,欠陥の深さは浅いが,明瞭に蛇行している接合境界が観察された.一方,図2 (c-1)に観察される接合部は,接合境界は直線状に観察され,境界上には,接合角を反映した数100nm程度の小さな欠陥が観察された.図2 (a-1)に観察される接合部は,直線状の境界は観察されず,多少蛇行しかかった境界が観察された.R-T特性結果からは,接合b-1は,薄膜が超伝導状態に転移した後も大きく抵抗値を残しており,この三種の中では,特性が最も劣化した結果を示した. 一方,サンプル#02のYBCO薄膜接合アレイのR-T特性結果を図3に,該当する結晶粒界接合部のFE-SEM像を図4に示す.図4に示すFE-SEM像からは,結晶粒界近傍には,欠陥が観察されず,また,対応するR-T特性も,超伝導転移後の抵抗値も低く抑えられており,a-2を除き,常伝導状態での抵抗値のばらつきも低く抑えられていた.YBCO薄膜エッチング後のSTO基板表面をFE-SEMにより観察したところ,サンプル#01において,STOバイクリスタル結晶粒界上に,100 nm~400 nm程度の欠陥が,数100nm程度の間隔で密集して観察されたのに対し,サンプル#02においては,ほとんど欠陥が観察されなかった.以上のことから,STO基板結晶粒界上に存在する欠陥が,その上に堆積するYBCO薄膜に欠陥を引き起こし,接合特性に影響を与えると推測できた.なお,サンプル#01,#02ともに,接合a-1,a-2の常伝導抵抗が高く出ているが,これは,接合箇所が基板のエッジ部近傍に存在することによるプロセス上の影響が支配的に影響していると考えられる. 82

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