平成21年度 実績報告書
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研究部門成果報告評価解析支援部門参考文献[1] Y. Sugimoto et al., Nature, 446, 64 (2007).[2]Y. Sugimoto et al., Nature Materials, 4, 156 (2005). [3] Y. Sugimoto et al., Science 322, 413 (2008).[4]Y. Sugimoto et al., Phys. Rev. Lett. 98, 106104 (2007) .[5]M. Abe et al., Appl. Phys. Lett. 87, 173503 (2005). [6]M. Abe et al., Appl. Phys. Lett., 90, 203103 (2005). [7] Y. Sugimoto et al., Phys. Rev. B 77, 195424 (2008). [8] Y. Sugimoto et al., Phys. Rev. B 78, 205305 (2008). [9] Y. Sugimoto et al., Appl. Phys. Lett. 94, 023108 (2009). [10] T. Fukuma et al., Appl. Phys. Lett. 87, 034101 (2005). [11] S. Rode et al., Langmuir 25, 2850 (2009). [12] Y. Takeda et al., Pearson's Crystal Data, Code No.1420384.4. KH2PO4 (KDP)結晶成長面の液中環境下での原子間力顕微鏡による原子分解能観察 KH2PO4 (KDP)結晶は可溶性結晶であり、工業的に広く用いられる非線形光学結晶である。原子レベルで結晶構造を画像することを試みた。 可溶性結晶の観察を行う上で、結晶の溶解や成長が大きな妨げとなる。そこで観察溶液として飽和溶液を用い、水の蒸発により飽和度が徐々に変化することを利用して実験をおこなった。図4(a)はKDP (101) 成長面の観察像を示したものである。図中の丸は理論的な原子配置を示しており、KかPO4のどちらかが画像化されていることがわかった。一方、図4(b)はKDP (100) 成長面の観察像であるが、理論的な原子配置に対して輝点の数が少なく、複数のK原子やPO4をまとめて観察している可能性がある。また、(100)成長面に関しては図4(c)のようにb軸方向に伸びるジグザグのパターンが観察される場合もあり、この場合は理論的な原子配置との比較によりK原子が画像化されていると推測される。以上のように本研究では可溶性結晶であるKDPの成長面を原子分解能観察することに成功した。図3 (a)NaCl(100)へき開面の表面構造モデル。(b)溶液中での(100)へき開面のAFM像。(c)Na;Mg=1:1の混合溶液中でNaCl(100)面をエビタキシャル成長させた時のAFM像。走査範囲は共に2nm×2nmでドリフト補正済みの像。図4 KH2PO4(KDP)表面の液中AFM像3. Mg存在下でのNaClエピタキシャル成長の原子間力顕微鏡による原子分解能観察 上述した通り可溶性結晶の原子分解能観察に成功し、測定条件に関しても確立しつつあることから、別の可溶性結晶の液中AFM観察に取り組んだ。具体的には、アルカリハライドの1種であるNaCl(100)へき開面の液中AFM原子分解能観察を行った。さらに、固液界面での反応過程を観察するという目的で、溶液中にマグネシウムイオンを添加した時のNaCl(100)面の変化についても同様に原子分解能観察を行った。 図3(a)は、NaCl(100)へき開面の表面構造であり、図3(b)はAFMによって得られたNaCl(100)表面の液中AFM観察結果である。図3(b)の像を見ると、1 nm未満の周期的な構造が観察されていることがわかる。その周期はおよそ3.9Åであり、図3(a)と比較すると、同一原子間の距離であるNa–Na間距離かCl–Cl間距離に相当する。これより、この像はNaClの格子像でNaかClのどちらか一方の原子が見えている状態であると予測される。 一方、図3(c)はNa:Mg = 1:1となるような溶液中でNaCl(100)面をエピタキシャル成長させた時の観察結果である。図3(a)よりNaCl(100)表面は4回対称の原子配置であるにもかかわらず、図3(c)は2回対称の平行四辺形状に原子が配置している。これまで報告されているNaCl–MgCl2系での結晶とそれらの結晶構造を考慮すると 、Na2MgCl4(010)面がエピタキシャル成長していると予測される。以上のように、溶液中でのエピタキシャル成長に関して液中AFMは結晶相・方位関係の調査が可能な強力なツールとなりえることを示した。[12]51

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