平成21年度 実績報告書
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企業と続けている共同研究を発展させるため、文部科学省 産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)-国際的な産学官連携活動の推進-の一環として、大阪大学産学連携推進本部と連携しながら、さらなる国際産学共同研究を検討する予定である。2. LPE法によるGaN結晶成長 窒化物半導体GaNは、照明事業や次世代光エレクトロニクス産業を創出する高輝度LEDや可視光~紫外LDなど発光デバイスや、次世代自動車産業を支えるハイブリッドカーなどの電子デバイスなど、新産業創出だけでなく、世界中が注目する環境・省エネルギー対策に対しても、必要不可欠なデバイスを提供する材料である。GaN結晶は分解性材料であるため、融液から常圧で直接育成することはできないが、Naをフラックスに用いることで数十気圧の窒素ガス下、800℃前後で溶液から単結晶の析出が可能になる。担当者らはこのNaフラックスを用いて液相エピタキシャル成長(Na-flux LPE: Liquid Phase Epitaxy)に取り組み、転位密度が10 ~10 cm の高品質結晶の作製に成功している。ここでは、文献1でまとめている結晶育成の成果を紹介する。揺動撹拌機能付の大型高圧チャンバーを用い、2インチMOCVD-GaNを基板としてLPE成長を試みた。チャンバー揺動の溶液攪拌効果により、LPE-GaN結晶の平坦性、均質性が向上し、結晶の成長速度は最大で30µm/hが得られた。図2にLPE成長させた2インチサイズのGaN結晶(研磨前と研磨後)を示す。 また、HVPE-GaN基板の上にLPE成長させたGaN結晶(研磨後)を図3に示す。基板を取り除いた時の結晶厚さは750µmであった。結晶は可視領域で透明であり、吸収端波長は372nmであった。移動度は900cm /Vcmが得られ、Si,O不純物起因の残留キャリア濃度は〜4×10 /cm であった。さらに、Ge添加によりLPE-GaN結晶が低抵抗化、Zn添加により高抵抗化することが明らかになった。Ge濃度2.5×10 /cm の時に0.016Ωcm、Zn濃度〜10 /cm の時に10 Ωcmが得られた。 LPE成長と平行し、バルク状GaN単結晶の育成に取り組んでいる。図4はNaフラックス中で自然核成長によって得られた~2mmのGaN結晶(a)を種子結晶として用い、大型化を試みた例である。96時間の成長で、(b)に示す〜8mmサイズまで大型化できている。今後、バルク状の大型結晶からc面の有極性基板や無極性のa面、m面基板を切り出し、電子デバイス、光デバイスの特性評価を行う予定である。なお、GaN結晶については、NEDO「ナノエレクトロニクス半導体新材料・ナノデバイス新構造技術開発(2007-2011年度、福井大学、名城大学他との共同研究)」によりGaN結晶の無極性面成長、高性能な光・電子デバイスに向けた研究開発を進めている。また、2009年度にNEDO「次世代高効率・高品質照明の基板技術開発(2009-2010年度ステージⅠ、2011-2013年度ステージⅡ、名城大他)」に採択され、高輝度LED照明の実現に向けたGaN結晶の基盤技術開発に取り組んでいる。参考文献[1] Y. Mori et al., Physica Status Solidi C (2010) in press.研究部門成果報告材料開発支援部門図3 HVPE基板を用いてNa-flux LPE法により得られたGaN結晶(研磨後)図4 (a)自然核発生により得られたGaN単結晶(b)自然核結晶を種子結晶に用いて成長させたGaN単結晶図2 Na-flux LPE法で得られた2インチGaN結晶(研磨前と研磨後).46−221631719383 47

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