平成21年度 実績報告書
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1. ホウ酸系非線形光学結晶による紫外光発生 微細配線化が進む超高集積半導体素子の開発において、マスク欠陥検査技術の超高分解能化が必須となっている。ハーフピッチ45nmの配線マスクの検査には波長193~199nmの真空紫外領域の短波長光が、32nm世代以降にはさらに短波長の光が必要とされている。実用的なビーム品質とスキャン速度が確保できることから、近赤外レーザー光と複数の非線形光学結晶を組み合わせた紫外光源が注目されている。2007年にJST-CREST(研究領域「次世代エレクトロニクスデバイスの創出に資する革新材料・プロセス研究」)の研究プロジェクトに採択され、現在、民間企業2社と波長変換方式の199nm光源の長寿命化に関する研究、新しい170nm台の真空紫外光源開発に取り組んでいる。ここでは、2009年度の主な成果を報告する。 担当者らが開発している、非線形光学結晶CsLiB O (CLBO)は、紫外光発生において優れた特性を発揮することが知られている。CLBO結晶内部に成長段階で取り込まれる水不純物を低減するため、育成溶液を脱水処理した後に結晶成長を行った。赤外透過スペクトルから、得られた結晶の内部水不純物は従来結晶の含有量の20%程度まで低減できていた。一方、従来の結晶は育成後の加熱処理によって水不純物を低減しても、レーザー損傷特性、素子耐久性で劣っていることが明らかになった。不純物取り込みに伴って形成される結晶欠陥が品質に大きく影響したものと考えられる。 (株)東芝・NEC(株)合弁会社のアドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー(株)(AMiT)において、和周波発生( 1/1064nm + 2/488nm =1/199nm) による199nm光発生CW光源装置(100mW級出力)を用いてCLBOを評価した。基本波の1064nm光源は、単一周波数で動作するファイバーレーザー、244nm光源は、アルゴンレーザーの内部SHGによる光源である。一定出力、変換効率が維持できる期間から素子の寿命を評価した。入射基本波の増減により出力一定化を行なう連続運転モードで試験した結果を図1に示す。従来の結晶は1日程度の素子寿命であったが、今回の新しい素子は、7日以上という顕著な素子寿命の伸長(変換特性の維持)を示した。さらに、紫外光に対する耐性が向上したことから、従来100mW級であった装置で、倍程度の出力が再現性良く得られるようになり、73~90時間程度、出力200mW以上の出力が維持できるようになった。結晶のシフト機能を用いると、一年以上の素子寿命が期待できることになる。 その他、CLBOに関しては大阪大学科学教育機器リノベーションセンターの先端機器開発プロジェクトの1つとして、共同利用可能な全固体193nmレーザー微細加工装置の整備を進めている。また、米国研究部門成果報告材料開発支援部門材料開発支援部門大阪大学大学院工学研究科附属フロンティア研究センター北岡 康夫大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻吉村 政志●機能性材料の結晶化と応用に関する研究 次世代電子デバイス開発に向け、機能性結晶が様々な分野で重要な役割を担っている。担当者らの研究グループでは結晶育成をコア技術として、半導体基板等の微細加工用レーザー、マスク欠陥検査用レーザー光源に用いられるホウ酸系非線形光学結晶,次世代パワーデバイスや高輝度LED、LD等の開発に不可欠な低転位窒化物半導体結晶、及びテラヘルツ波発生用の新規有機非線形光学結晶の開発を行っている。ここでは、非線形光学結晶、窒化物半導体にフォーカスし、2009年度の成果を報告する。図1 CLBOによる199nm発生寿命試験結果、旧来の育成法による特性と、今回取り組んだ乾燥育成素子の結果61046

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