平成21年度 実績報告書
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研究部門成果報告材料開発支援部門材料開発支援部門大阪大学 先端科学イノベーションセンター電子材料・システム系分野大森 裕●有機材料による電子・光デバイスの開発 次世代型の電子システムを構築するために, 有機材料と無機材料の利点を生かした「有機-無機ハイブリッド新機能材料の創製と新機能デバイス・システムの構築」を研究課題としている。新電子材料と光・電子システム分野を融合した形態をとり、フレキシブル素子、 プリンタブル電子・光デバイスの研究開発と次世代型の新電子システムの研究に取り組んでいる.本稿では,当研究室で研究を展開する「有機材料による電子・光デバイスの開発」に関する研究成果の概要を報告する。図1 発光材料TPTPAの分子構造と有機ELの発光写真1.はじめに 有機材料の特徴は、溶液プロセスにより室温でどのような基板上にも電子・光デバイスを作製できることである。溶液プロセスでプラスチック基板上に作製した、フレキシブルでプリンタブルな次世代型の新電子システムの構築に向けた「有機材料による電子・光デバイスの開発」に関する研究成果の概要を報告する。2.研究成果2.1 高移動度正孔輸送材料を用いた有機発光素子の研究 高移動度な材料を有機発光素子(有機EL)へ適用することで、駆動電圧の低減などの特性向上が期待できる。そこで、従来の非晶性正孔輸送材料に比べて一桁程度大きい(μ=1.0×10 cm V s )キャリア移動度を示す図1に示すアモルファス分子を発光材料に用いて、真空プロセスにより有機発光素子への適用を検討した。この材料は蛍光寿命の測定から τ=1.3 nsを示し、正孔輸送層を兼ねた発光層として用いることで高速光応答可能な有機ELの実現が可能となる。発光ピーク波長460 nmの青緑色発光を示し、素子構造の最適化を行うことで、最大輝度約8,000cd/m 、最大発光効率が2.0 cd/Aを得て、高輝度で、応答速度 約10ns の高速動作を実現した。222.2 ポリマー材料を用いた高輝度・高速応答の 有機発光素子の研究 ポリフルオレン系のポリマーは最初に青色有機ELとして報告されたポリマー材料であるが、骨格は同じでも側鎖の違いや、共重合体を形成することにより発光波長を制御でき、青色から赤色までの発光を実現出来る。ポリマー材料は分子ユニット間の配列によって異なる性質を示すことが知られており、薄膜相を制御することで優れた特性を得ることが課題とされている。導電性高分子鎖の階層的な構造制御の可能性を検討し、一次元鎖状構造のポリアルキルフルオレン(F8) においてβ相と呼ばれる配列が制御された薄膜を作製することで、従来のアモルファス相のF8に比べβ相では発光効率が約4倍以上向上し 、応答速度約10nsの高速動作の素子を実現した。 また、大面積の有機ELを簡便な方法で作製するためには、真空環境を必要としない溶液プロセスによる薄膜形成が重要である。しかし、溶液プロセスで作製した素子はキャリアバランスが悪いという問題がある。キャリアバランス、特に正孔注入や正孔輸送の改善のために、分子ドーピングや新たな分子材料の合成も検討されているが、素子構造の観点から発光層と正孔注入層の間にインターレイヤーを挿入することでキャリアバランスの改善による素子特性の向上を図った。その結果、適切なエネルギー準位をもつインターレイヤーを挿入することでキャリアバランスが改善され、最高輝度が約6万cd/m 以上を示し、高輝度、高効率素子により、応答特性の高速化が可能であることを見出した。素子構造に着目したデバイス設計を行うことで、ポリマー光ファイバーの低損失領域に対応する黄緑発光を示すF8BTを用いた有機ELで30mW/cm 以上の光出力を有し、100MHzのパルス電気信号印加時に、それに対応した100MHzの変調光が得られた。(図2)この有機ELを電気-光変1)2244

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