平成21年度 実績報告書
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研究部門成果報告材料開発支援部門材料開発支援部門大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻尾崎 雅則●次世代電子デバイスのための有機エレクトロニクス材料開発 シリコンなどの無機材料に代わって次世代の電子デバイスを実現するための有機電子光機能材料の開発を行っている。ここではその中から、金属ナノ微粒子分散液晶の開発と有機分子で制御した表面プラズモン励起と蛍光増強について述べる。すなわち、スパッタ法により液晶内への金属ナノ微粒子を簡便に均一分散させる手法を開発した。本手法を用いて、液晶ディスプレイの特性改善とコレステリックブルー相の安定化に成功した。また、液晶の外場応答性を利用して表面プラズモンの励起を制御したチューナブルプラズモニクス素子を提案した。さらに、金属ナノ周期構造にbiharmonic構造を導入することにより、プラズモニックバンドギャップの発現を確認し、そのバンド端での導電性高分子の蛍光増強効果を観測した。部門長図1 直接スパッタ法により液晶内に分散した金ナノ微粒子の透過電子顕微鏡像と粒径1.はじめに 本研究室では、液晶、共役系高分子などの分子材料を用いた、新しいエレクトロニクス・フォトニクス材料・デバイスの可能性を探求している。特に、自己組織化や大きな外場応答性などの分子の性質を積極的に活用した分子機能材料・デバイスを開発している。すなわち、自己組織性を有する液晶材料、高い電子光機能性を有する導電性高分子を中心に、次世代ディスプレイ、新規光機能デバイス、高効率薄膜太陽電池、有機レーザー、新機能フォトニクスデバイスなどの開発を行っている。本拠点においては、これらのシーズに基づいて、有機材料に基づく次世代デバイス実現のための基幹技術の開発を推進し、新材料開発の観点から教育研究を支援している。2.金属ナノ微粒子分散液晶の開発 液晶内に金属ナノ微粒子を均一分散させる新しい手法を開発した 。一般に、ナノ微粒子の均一分散のためには、ナノ微粒子表面に適当な化学的処理を施す必要があるが、本手法では、このような前処理を一切必要とせずに、種々の金属を液晶に直接スパッタすることにより、液晶内に粒径数nmの金属ナノ微粒子を直接分散させることが可能である。図1に、液晶内に分散させ作製した金微粒子の透過電子顕微鏡像を示す。分散された金属微粒子の粒径は、スパッタ時間、液晶の状態(相など)により制御できる。 また、今回開発した微粒子分散手法を用いて作製したナノ微粒子分散液晶において、電気光学特性を評価し、微粒子分散による特性改善が確認できた。各種金属ナノ微粒子を分散させたネマチック液晶の電気光学効果(TNモード)を測定したところ、閾値電圧が駆動周波数に依存し、向処理の時に比べて閾値が低下していることが明らかとなった。 一方、液晶内にナノ微粒子を分散させることによって新しい液晶材料開発の可能性も検討した。すなわち、ナノ微粒子を分散させることによってコレステリックブルー相の安定化に成功した。一般に、液晶のカイラリティを増大させていくと三次元螺旋構造が発現する。すなわち、液晶分子は、カイラリティによってお互いにねじれ構造を形成しようとするが、このねじれの方向は必ずしも一次元的である必要はなく、液晶分子は分子軸に垂直面内のあらゆる方向にねじれようとする。しかしながら、総ての方位にねじれて三次元空間を無理なく埋め尽くすことは不可能で、必然的にトポロジカルな配向乱れ(欠陥)を含むことになる。その結果、このような配向欠[1]42

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