平成21年度 実績報告書
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研究部門成果報告フォトニックデバイス部門フォトニックデバイス部門大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻北山 研一●超高速光A/D変換技術 近年100Gbps級の長距離光ファイバ通信においては、ディジタル信号処理のフロントエンドに使用されるアナログ・ディジタル(A/D)変換器が、ビットレートの高速化によって速度限界に直面しており、このボトルネックを克服できる超高速光A/D変換への期待が高まっている。本報告では、実験で計測した5ビット用8周期のNOLM 伝達関数から数値解析によって、実効ビット数 (ENOB)を8.8ビットに向上できることを示す。 図1 全光A/D変換器の動作原理と構成2. 動作原理;非線形光ループミラーの多周期特性を用いた超高速光A/D変換方法 NOLMの構成を図1上部に、NOLMの伝達関数を図1左下に示す。この全光A/D変換器は標本化されたアナログ信号を複数台の異なる周期の伝達関数を持つNOLMへと入力し、その伝達関数を用いて量子化、符号化を行うことを特徴とする。そして、それぞれの1. はじめに 100Gbps級の長距離光ファイバ通信においては、高分散耐性を実現するためディジタル信号処理を用いた光通信技術の研究開発が活発化しており、ディジタル信号処理のフロントエンドに超高速、広帯域のアナログ・ディジタル変換器が必要となっている。しかしながら、既存の電気的なA/D変換器では、時間ジッタ等の制限により数10ギガサンプル毎秒(以下GS/sと略す)に止まっており、100GS/s、量子化ビット数6ビット以上という所要の仕様を実現することは困難である。 そこで、我々はA/D変換のキーとなる非線形光ループミラー(NOLM :Nonlinear Loop-Mirror)を用いた量子化、符号化の手法を2004年に提案し、原理確認のための3ビット、10GS/sの研究結果を主要な国際会議で招待講演を含め数々発表しており、国内外で特許(U.S.Patent No.7423564など)を取得してきた。 H20年度には分解能を向上させるためNOLMの改良を行い、5ビットの量子化分解能の実現を可能とする8周期NOLMの成果を報告した。本報告では、実験で計測した5ビット用8周期のNOLM 伝達関数から数値解析によって、実効ビット数(ENOB)を8.8ビットに向上できることを示す。NOLMから出力された信号をしきい値処理することにより、図1右下のような隣接符号間で異なるビット数が1のGray符号の光ディジタル信号を出力する。次に、NOLMの動作原理について説明する。時計回りのプローブパルスはWDMカプラによりコントロールパルスとして入力されるアナログ信号と重畳されて高非線形ファイバ(HNLF)へと入力される。時計回りのプローブパルスは高非線形ファイバ中でコントロールパルスから相互位相変調(XPM)による位相変調f を受ける。一方、反時計回りのプローブパルスが受ける位相変調f はコントロールパルスのデューテイ比が小さければ無視できる。そして、時計回りと反時計回りのプローブパルスは3dBカプラにより合波され、BPFによりコントロールパルスを取り除く。このときに透過ポートから出力されるプローブパルスの強度は、位相変調の差 Δφ=|f -f |によって変化し、透過率はT=(1-cosΔφ)/2となる。位相変CCWCCWCWCW 36

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