平成21年度 実績報告書
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研究部門成果報告フォトニックデバイス部門光子検出器の特性(検出効率/雑音特性)を考慮したシミュレーションにより、本方式が有効であることを示した。4. デコイDPS-QKD DPS-QKDでは微弱な連続位相変調パルス列が送受信される。この方式の改良版として、振幅の異なるパルス(デコイパルス)をランダムに挿入する方式について検討した。一般に微弱光の位相と振幅を同時には正しく測定することはできず、そのため位相情報が盗聴されると、デコイパルスの振幅が変化する。この振幅変化より盗聴を検知する。これまで2値USD連続クリック攻撃に対して有効であることを示していたが、本年度はさらに、個別一般攻撃、ホモダインなりすまし攻撃、4値USD連続クリック攻撃など、他の盗聴法について検討しその有効性を示した。5. 量子/古典波長多重伝送系におけるファイバーラマン散乱の影響 量子暗号システムでは、1光子レベルの光を送受信する量子チャンネルと、鍵生成のための後処理情報をやり取りする古典チャンネルが用いられる。通常は両者は別々の伝送媒体で送られるが、同一ファイバ上で波長多重伝送できるとシステム的に効率が良い。しかしながらこの場合、高い光パワーの古典チャンネル光から発生する自然ラマン散乱光が量子チャンネル伝送の障害となることが知られている。但しこれまでは、特定の条件下での影響が検討されているのみであった。 そこで本研究では、量子/古典チャンネル波長多重伝送系におけるラマン散乱光の影響を定量的・体系的に検討した。まず、ファイバで発生するラマン散乱光パワーを各種条件下で測定し、モデル化した。その後、測定結果に基づき、古典チャンネル波長多重時の量子チャンネルの伝送特性をシミュレートし、量子チャンネル伝送が可能である動作条件を定量的に明らかにした。6. 広ゲート幅APD単一光子検出器 量子暗号システムの基本デバイスである単一光子検出器には、アバランシェフォトダイオード(APD)を高電圧印加状態で用いることが一般的である。但し、連続的に高電圧を加えると誤動作しやすくなりさらには破損するため、一瞬だけ高電圧を印加するゲート動作モードで用いる。この場合、特定の時刻のみでしか光子検出できず、光子検出速度の制限要因となる。また、QKD方式としては連続的に光子検出可能であることが求められるプロトコルもあるのだが、そのような方式にはゲート動作APDは使用できない。 そこで、広い時間幅のゲート電圧を印加する駆動法を試みた。ゲート幅を広げた分だけ光子検出率が上がり、また数パルスに渡っての光子検出が可能となる。実際に回路を試作したところ、所定の性能が得られた。33

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