平成21年度 実績報告書
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研究部門成果報告センシングデバイス部門図4図2図3参考文献[1] 奥野弘嗣, 八木哲也, "ロボット車両の衝突回避のための知能視覚システム," 日本機会学会ロボティクス・メカトロニクス講演会 2009,福岡,2009/5/24-26,講演論文集,pp.2P1-G10(1)-(3).[2] 奥野弘嗣,今井快多,八木哲也,"実時間画像処理機能を備えた広ダイナミックレンジイメージセンサ," 日本機会学会ロボティクス・メカトロニクス講演会 2009,福岡,2009/5/24-26,講演論文集,pp.1A1-C18(1)-(3). [3] 奥野弘嗣, 松岡 優, Tamas Fehervari, 八木哲也, "視覚野電気刺激によって誘発される光覚のシミュレーション," ニューロコンピューティング研究会, 東京, 2010/3/9-11, 信学技報, vol.109, no.461, pp.363-366.3. 視覚制御ロボットへの応用 車両ロボットにアナログ・ディジタル混在型知能視覚システムを搭載し、ロボットの視覚制御システムの開発を行った(用いた車両ロボットは図3)。自律移動型のロボットにとって、視覚は周囲を把握するための豊富な情報源となる。しかしながら視覚情報処理は計算コストの高い処理であるため、従来の逐次型処理システムでは、小型・低消費電力・実時間処理といったロボットビジョンの要件を満たすのは極めて困難である。この様な局面において、本研究グループの知能視覚システムは強力なソリューションとなる。ロボット車両の視覚制御の一例として、衝突検知システムを開発した。衝突検知を担っているバッタの視覚神経回路モデルに学び、衝突経路を接近する物体に対して特異的に反応するシステムを実装した 。本衝突検知システムをロボット車両に搭載し、屋外で動作検証を行うことにより、照明環境が苛酷な屋外でもロバストに衝突の危険のある物体に対して特異的に応答することを確認した。また、屋外応用のため、イメージセンサの広ダイナミックレンジ化の研究も併せて行った 。 また、ロボットの視覚ナビゲーションの応用に向けて、レーン追従システムを開発した。開発したシステムは、車線左右の白線を手掛かりとして道路に沿って自動走行するよう、車両ロボット前輪の角度を調整する。処理の流れとしては、まずシリコン網膜から得られる輪郭強調画像から白線を抽出し、シリコン網膜の高さ、角度を既知として、画像上の白線を道路平面上の座標に変換する。この道路平面上の白線情報に従って、車輪の角度を調整する。本システムを搭載したロボットは、様々な照明環境下において、安定して白線に沿った自律走行を行った。4. 人工視覚シミュレータの開発 近年、失明者の大脳皮質を電気刺激し視覚機能を部分的に代行する治療法、すなわち人工視覚の研究と臨床実験が進んでいる。大脳皮質刺激型の人工視覚システムでは、外界の視覚情報を電気パルスに変換し、埋植した電極配列にパルス刺激を加える。患者は,電気刺激によって惹起される光の感覚(光覚、phosphene)を感じる。人工視覚を臨床応用へと結び付けるには、このphospheneを解析し、より効果的な電気刺激方法、電極のデザイン、信号処理などを検討する必要がある.人工視覚システムには、撮像・画像処理・電気刺激の3つの構成要素が必要であり、また、小型かつ低消費電力であることが求められる。本研究では、シリコン網膜を大脳皮質刺激型の人工視覚に応用することを前提として、入力画像に対応した電気信号が惹起するphospheneを予想する実時間シミュレータを構築した 。脳半球片側の一次視覚野を電気刺激することを前提としているため、本シミュレータから出力されるのは半側視野のphospheneである(出力の一例は図4)。シミュレーションには、網膜や視覚野神経回路で存在する輪郭強調や時間フィルタを組み込み、電極数やフィルタサイズなどを変え、実験を行った。本研究で開発されたシミュレータは、人工視覚の最適な刺激方法を決定する上で有効である。[3][2][1]29

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