平成21年度 実績報告書
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将来のユビキタス・アンビエント社会の実現には、高機能で高性能な電子デバイスを安価に市場に供給する“ものづくり”産業を強化する必要がある。この目的を実現するため、わが国では、従来のようにエレクトロニクス材料やデバイスに関する深い専門的な知識を有する技術者のみならず、システム的な視点からバランス良くデバイスの構成要素全般を見渡せる技術者の養成が必須である。 本グローバルCOE「次世代電子デバイス教育研究開発拠点」はこのようなユビキタス社会を支える次世代電子システムを開発できる高度技術者の養成を目的としている。要素技術をバランス良く統合するシステムデザインを志向する学生・若手教員を育てるため、研究室の壁を超えて若手教員と大学院学生とが協力してIDER(Innovation oriented Dynamic Education Research unit)を組織した。このユニットがグローバルCOEの中核となって将来の安全・安心な社会の実現に向けた次世代電子デバイス(パワー、センサ、フォトニック)の研究開発を行っている。IDERは単なるデバイス開発プロジェクトではなく、若手教員と大学院学生とが研鑽を重ねて創造的な活動を実践する場と位置づけている。事実、過去2年間のIDERの活動を通して、本GCOEの構成員(若手教員・大学院学生)の意識改革が始まっている。研究室で学んだ深い専門知識を有する若手同士が真摯に意見を出し合うことで新しいアイディアが生まれることや、ともすれば各論的な議論に陥り、相互理解が難しかった各種技術も突き詰めれば本質的な共通概念が存在することが理解され始めている。 さらに、大学院学生対象に行っている「シリコン学」教育では、①コミュニケーション力、②リーダーシップ力などの社会人としての基礎力養成に加え、将来、一流の研究者・技術者が備えるべき資質(①膨大な実験データから形式知を抽出する力、②形式知から仮想実験を行える力)を若手の構成員に伝えることに重点を置いている。博士後期課程学生には、インターネットなどで簡単に取り出せる百科事典的な”知識”より、技術者としての“智恵”を付けることに主眼を置いている。そして、本拠点で教育を受けた学位取得者(PhD)が、将来、専門外の技術分野に進出しても超一流の研究者・技術者として活躍できる自信をつけることが本拠点の目的である。 過去2年間の活動経過を振り返ってみると、年配の教員が中心となって拠点の枠組みを作り、その枠組みの中で若手教員が積極的に拠点の運営を行い、さらに学生組織である”COE学生会”が参画することで全員参加型の教育研究拠点ができつつある。 今後も、世界で活躍する”真のDoctor of Philosophy”を大勢輩出するグローバルCOE拠点として教育・研究活動を進めてゆきたい。新たな電子デバイスの実現を目指して拠点リーダー谷口 研二大阪大学 大学院工学研究科 電気電子情報工学専攻 本成果報告書は過去3年間にわたる拠点の研究・教育の成果をまとめたものです。ご高覧いただき、ご意見を賜れば幸甚に存じます。今後とも、我々のグローバルCOEに対するご指導、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。Ⅰ

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