平成21年度 実績報告書
28/156

研究部門成果報告センシングデバイス部門センシングデバイス部門レーザーエネルギー学研究センター斗内 政吉●テラヘルツセンシング・メージング工学の開拓 本研究では、テラヘルツセンシング・イメージング工学の創成に資する基盤形成を目的として、新機能性電子材料のテラヘルツ科学、テラヘルツ機能性デバイスの開発、並びに、テラヘルツ応用システムの開発に取り組んでいる。特に重要な課題として1)テラヘルツ時間領域分光装置を用いた機能性材料物性評価、2)高温超伝導体テラヘルツデバイス開発、3)レーザーテラヘルツ放射顕微鏡の開発、と言った課題に取り組んだ。図1 入射テラヘルツ波の偏光角が0°、30°、90°におけるカーボンナノチューブ薄膜の吸光度の 周波数依存性1. テラヘルツ時間領域分光装置を用いた機能性材料物性評価 近年、テラヘルツ帯で動作する新しいデバイスや材料開発が活発に行われている。我々は独自に開発した温度可変型広帯域テラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)システムを用いて、遷移金属酸化物やカーボンナノチューブ等の次世代機能性材料として期待されている物質系の分析・評価を行っている。本研究で利用したテラヘルツ分光装置では、テラヘルツ光源にDAST(4-dimethylamino-N-methyl-4- stilbazolium tosylate)と呼ばれる非線形有機結晶を用い、0.5~6THzの周波数領域で分光可能である。また、本システムでは、テラヘルツ光源、測定サンプル、検出器のすべてが冷凍機の真空チャンバー内に設置されている。このため、発生したテラヘルツ波は水蒸気や光学窓材などの吸収による影響を受けない。本システムを用いて単層カーボンナノチューブ(SWNT)やチタン酸ストロンチウム(SrTiO )、ガスハイドレート等のテラヘルツ波応答を評価した 。 我々はこれまでに、高度に配向させたSWNT薄膜のテラヘルツ波透過測定を、0.2 THz~1.8 THzの周波数範囲で行い、SWNT薄膜がテラヘルツ帯域の偏光子として高い性能を持つことを示した 。今回我々は、上記システムを用い、さらなる広帯域における分光測定を行った。 図1がテラヘルツ波のSWNTの配向方向に対する偏光角θを0°、30°および90°の場合のテラヘルツ帯におけるSWNTの吸光度である。測定結果から、4THz付近にピークがあるが、θ=30°,θ=90°と偏光角が大きくなることに伴いピークが3.5THzへ低周波側にシフトしている事が分かる。その原因についてはまだ解明できていないが、このような挙動は従来報告されておらず、高度に配向したSWNTに特有の性質として注目される。 このほか、SrTiO 薄膜に歪みを導入することにより強誘電性が発現し、ソフトフォノンモードのソフト化が促進されることをテラヘルツ分光から明らかにした 。[1][2]3MO Signai(mV)[3]図2 レーザー走査型MO顕微鏡で検出した高温超伝導SQUID中の交流磁束324

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です