平成21年度 実績報告書
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研究部門成果報告センシングデバイス部門センシングデバイス部門大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻片山 光浩●カーボンナノチューブの作製制御とデバイス応用 本グループでは、電気伝導特性、形状、強度・柔軟性・耐腐食性等の面で優位性をもつカーボンナノチューブ(CNT)に着目し、その特性を活かした新機能デバイスを開発する研究を進めている。同時に、ナノレベルでのものづくりに適した計測技術および表面科学的研究にもとづいたアプローチとして、CNT探針を用いた走査トンネル顕微鏡(STM)等の極限計測技術の開発、および物質表面での原子の挙動に関する研究を進めている。ここでは,CNTのデバイス応用と物性評価の試みとして、ガスセンサ、およびCNTの状態密度の高精度計測法の研究開発について報告する。部門長2図1. NO に対するセンサ応答図2. NO に対するセンサ応答の変動率(●)と初期抵抗(●)21. 超高感度ガスセンサの高信頼化 環境汚染ガスを超高感度センシングする技術の開発が望まれている。我々は、単層カーボンナノチューブ(SWNT)ガスセンサの開発に成功し、ppbオーダーの極微量検知、室温動作等の優れたセンシング特性を実証し、センサの高機能化に向けた研究を進めてきた。しかしながら、SWNTが外気に曝されると、大気成分ガスによる干渉やガス吸着・脱離に伴うSWNTの劣化により、一定濃度のガスに対するセンサ応答が変動するという課題を残しており、実用化のためには、高い信頼度で濃度定量できるディペンダブルなガスセンサの開発が望まれている。そこで、本研究では、SWNTガスセンサに保護膜として金属酸化膜を修飾することを提案し、高信頼性センサとしての有用性を実証した。図1に、SiOx、 AlOx膜でSWNTを修飾した金属酸化膜修飾SWNTセンサ(SiOx-SWNT,AlOx-SWNT)におけるNO2(500ppb)に対するセンサ応答を示す。金属酸化膜修飾SWNTセンサは、 as-grownのものよりも高い感度を示し、SiOx-SWNTは3.5倍、AlOx-SWNTは2倍の応答を示した。次に、同じ条件で実験を間欠的に繰り返しおこない、センサの安定性を調べた。図2に、各測定で得られたセンサ応答の変動率と初期抵抗の変化を示す。as-grown SWNTでは40%以上の変動率でセンサ応答にばらつきがあるのに対して、金属酸化膜修飾SWNTでは、応答の変動率が7-8%に低減され、高い安定性を示した。一方、初期抵抗については全てのSWNTで安定であった。これらの結果は、as-grown SWNTでは、ガス吸着・脱離の過程で欠陥の生成/修復が起こり、選択吸着サイトの数密度が変動するのに対して、SWNTに金属酸化膜を修飾すると、それが[1]18

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