平成21年度 実績報告書
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研究部門成果報告パワーデバイス部門パワーデバイス部門福井大学大学院工学研究科 電気電子工学専攻葛原 正明●窒化物半導体トランジスタ技術 次世代の高周波パワーデバイスや低損失パワースイッチングデバイスとして窒化物半導体が注目されている。ここでは、2インチGaN基板上に作製したAlGaN/GaN HEMT(High Electron Mobility Transistor)、AlN基板上に世界初で試作したAlGaNチャネルHEMT、オン電圧を低減した新構造GaNショットキーダイオードの試作と評価などに関連して得られた研究成果を報告する。図1 HEMTマスクパターンと2インチ基板の表面写真1. はじめに 窒化物半導体は、高耐圧動作と高周波動作を両立でき、しかも二次元電子ガスの高移動度を活用することにより低抵抗のスイッチング動作が可能であり、高周波応用やパワースイッチング応用のキーデバイスとして有望視されている 。しかし、現状では窒化物半導体バルク基板の開発が遅れており、InGaNやAlInNなどの窒化物混晶半導体のヘテロエピ成長技術についても更なる技術革新が強く要望されている 。本報告では、2インチGaN基板上に作製したAlGaN/GaNへテロ接合HEMTの直流特性、AlN基板上に世界初で試作したAlGaNチャネルHEMTの直流特性、オン電圧を低減した新構造ショットキーダイオードの直流特性などについて報告する。2. GaN基板上のAlGaN/GaN HEMTの試作 昨年度(2008年度)からNaフラックス法で育成した自立GaN基板(大阪大学森勇介教授より提供)の上にAlGaN/GaNへテロ構造をMOVPE成長し、そのエピ層上にHEMTの試作実験を開始している。良好なデバイス動作は昨年度に確認済であるが、今年度は、2インチ径のGaN基板全面上に光学露光装置を用いてゲート長3μmのプレーナ型FET試作を実施し、良好な直流特性と面内均一性を確認した 。また、ICPドライエッチングを用いてリセスゲート技術の検討を開始した。反応ガスにBCl を使用し、バイアス電力を変化させることによりAlGaNのエッチング速度を1.5~6nm/minの範囲で制御できることを確認した。また、本ドライリセス技術を用いてAlGaN/GaN HEMTを試作し、リセスエッチングによるしきい値電圧の正方向シフト(-2.9Vから-1.9Vへの移動)と相互コンダクタンスの増加(140mS/mm⇒170mS/mm)を確認した。3. AlN基板上のAlGaNチャネルHEMTの試作 GaNは高温動作デバイスとして期待されているが、GaNよりさらに広いバンドギャップを有するAlGaNをチャネル材料として用いることにより、一層の高温安定動作を期待することができる。本研究では、基板にAlN自立基板を用い、バッファ層を介してAl組成24%のAlGaNチャネル層とAl組成51%のAlGaN障壁層を連続エピ成長することにより、世界初のAlN基板上AlGaNチャネルHEMTの試作に成功した。試作したゲート長3μmのHEMTは良好なピンチオフ特性と飽和特性を示した。直流特性の温度依存性を室温から300℃に亘って評価したところ、通常のAlGaN/GaN HEMTに比較して、高温(300℃)でのドレイン電流低下率が小さく(GaNチャネルの70%に対してAlGaNチャネルでは40%)、オン電圧の増加率も小さいこと(GaNチャネルの270%に対してAlGaNチャネルでは140%)が確認された。さらに、ゲート漏洩電流も300℃においてAlGaNチャネルが約2桁低い値を示すことが確認され、高温動作素子としてAlGaN[3]3[1][2]16

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