平成21年度 実績報告書
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研究部門成果報告パワーデバイス部門パワーデバイス部門大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻伊瀬 敏史●大容量インバータ向けソフトスイッチング回路 本報告では平成21年度の成果の中で、大容量インバータ向けソフトスイッチング回路について検討を行った結果を述べる。万一の場合の過電流保護および制御の簡単さに特徴のある回路を考案し、シミュレーションおよび実験により回路の特性を調べた。その結果、1)ソフトスイッチングにより逆並列ダイオードを含む主スイッチング素子のスイッチングロスがハードスイッチングの9.7%に削減できること、2)逆並列ダイオードを含む主スイッチング素子にかかる最大電圧が直流電圧の約160%まで低減できることを示した。また,MVA級の大容量インバータへの適用評価を行った結果、補助回路を含む損失がハードスイッチングの約半分になることが分かった。本回路における補助スイッチング素子には主スイッチング素子と同程度の高電圧が印加されるが、実効値として流れる電流は極めて小さく、また高速動作が望ましい。このような観点からSiC素子など新しいパワー半導体素子の適用が有効であると考えられる。部門長図1 提案回路図2 提案回路の制御信号<+=221. まえがき 半導体電力変換器へのソフトスイッチングの適用はスイッチング損失と高周波ノイズを共に低減することとなり非常に有益である。しかし、100kVAクラス以上の大容量交直変換器用途においてさまざまな回路が提案されているものの、制御の複雑さや素子数の増加といった問題点があるため実用化には至っていない。有望とされている方式のひとつとして補助共振転流ポール方式(ARCP;Auxiliary Resonant Commutated Pole)がある 。しかし、 この回路方式には,制御が複雑になることや、アノードリアクトルがなくPN短絡保護が容易でないことから主スイッチにGCT(Gate Commutated Turn-off Thyristor)などの導通損失が小さく大容量に適しているサイリスタ系のスイッチ素子の使用が困難であるといった欠点がある。これらの問題を解決するものにターンオン・ターンオフスナバを使用した回路がある 。この回路はARCPと比べて制御が簡単で、スイッチに直列にアノードリアクトルが接続されている。しかし、この回路には主スイッチにかかる最大電圧が直流電源電圧の2倍になってしまうという欠点があった。そこで本研究では文献[2]に示されているターンオン・ターンオフスナバを使用した回路に変圧器を新たに加えることにより 、主スイッチにかかる最大電圧を抑制する回路を提案し、1kVAミニモデルで実験を行い動作確認および損失を解析し、実験結果をもとにして大容量回路に適用した場合の損失を評価した。2. 提案回路 図1に提案する回路を示す。この回路は文献[2]に示されているターンオン・ターンオフスナバを用いた回路に変圧器を加えて改良した回路であり、改良前の回路と同様に以下の利点をもつ。・通常のPWM制御が適用可能である 主スイッチにGCTなどの導通損失が小さく高耐圧であるバイポーラ素子が適用可能である。 さらにターンオン・ターンオフスナバを用いた回路と比べて以下の点で優れている。・主スイッチにかかる最大電圧を以下の式で示すV まで抑制可能である V :直流電圧n:変圧器の巻数比・図2に示すように主スイッチと補助スイッチを全く同じ制御信号で制御できる。また図2中のデッドタイムΔtは電流の大きさや向きに依存しないので、制御が非常に簡単である。dc[3][1][2]SMax 22222222212

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