平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/ポストドクター・GCOE研究員小 振 幅 制 御 で の N C - A F M 測 定 の た め の バ ネ 定 数 の 高 い c a n t i l e v e r の 開 発 森田 健一 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 森田 研究室 ア ブ ス ト ラ ク ト 非接触原子間力顕微鏡 (NC - AFM : Non Contact – Atomic Force Microscope) は、原子分解能で非破 壊にデバイス表面の機械的特性(表面近傍の凹凸形状や力学的ポテンシャルなど)を調べることが出来 る評価・分析装置である。近年、 NC - AFM の cantilever を数Å以下の小振幅で振動させることで、被測定 量である原子間力の空間分解能を向上させられることが分かってきている。しかしながら、小振幅制御 での測定に必要なバネ定数の高い cantilever が市販されていなかったため、バネ定数の高い cantilever を作製し、これを用いて小振幅制御での N C - AFM 測定を行い、原子分解能を達成した。 最近、小振幅制御で NC - AFM 測定を行うことで、空間分解能が上がることが報告されている。しかし、 小振幅制御では、測定の安定性が低下すると考えられる。よって、安定に測定するための条件を以下の 通り検討した。 NC - AFM の測定を安定に行うためには、条件式: kA > F ts ・・・ (1) を満たす必要がある。 k は cantilever のバネ定数、 A は cantilever の振動振幅、 F ts は cantilever の先端とサンプル間に働く引力(原子間力)で あり、 kA は cantil ever の復元力を意味している。式 (1) を満たさない場合は、 cantilever は、原子間力によっ てサンプルに引き寄せられて衝突( jump - to - contact )してしまう。実際に、普段大振幅制御で使用している バネ定数 40[N/m] の市販のカンチレバーを用いて実験を行ったところ、振幅 160[ Å ] 以上では安定に測 定出来たが、振幅を下げた途端に、 jump - to - contact が発生し、測定出来なくなった。小振幅制御での NC - AFM 測定のためには、少なくとも 5[ Å ] 程度まで振動振幅を下げる必要があるので、この振 動振幅で 大振幅制御と同等の安定性を確保するには、 (1) 式を考慮すると、少なくともバネ定数 1300[N/m] の cantilever が必要となる。 しかしながら、市販の cantilever は、概ねバネ定数が 100[N/m] 以下であったため、図1のような構成の バネ定数の高い cantilever の作製を行った。構成は単純であるが、基材に水晶を用いたため、バネ定数 が 1800[N/m] まで向上し、 (1) 式の条件を満たすことが出来た。また、作成した cantilever を用いた小振幅 制御による原子分解能での測定結果を図 2 に示す。 図 1 作成した cantilever のモデル 水晶 ( 黒色部分 ) に、市販の cantilever( 白色部分 ) を、接着して作成する。 図 2 Si(111)7 × 7 における室温 NC - AFM 像 Size : 8.5nm × 8.5nm 113

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