平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/ポストドクター・GCOE研究員高 出 力 テ ラ ヘ ル ツ 波 発 生 に 向 け た 有 機 非 線 形 光 学 結 晶 の 溶 液 成 長 松川 健 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 森 研究室 ア ブ ス ト ラ ク ト 有機イオン性非線形光学材料 4 - dimethylamino - N - methyl - 4 - stilbazolium tosylate (DAST) と 4 - dimethylamino - N - methyl - 4 - stilbazolium p - chlorobenzensulfonate (DAS C ) は、メタノールとアセトニトリ ルの混合溶媒を用いて結晶育成することによりバルク化する傾向にある 。我々は、バルク DASC 結晶か ら 広帯域・高出力 THz 波発生を観測した。 DASC 結晶は DAST 結晶に比べ THz 帯における透過特性 に優れていることが分かり、 DAST よりも高出力 THz 波発生が期待できる。 高い非線形性を有する 4 - dimethylamino - N - methyl - 4 - stilbazolium tosylate (DAST) と 4 - dimethylami no - N - methyl - 4 - stilbazolium p - chlorobenzensulfonate (DAS C ) は、高出力・広帯域テラヘル ツ (THz) 波を発生可能であることが知られている。我々は、 DAST 結晶と DASC 結晶の実効的な相互作用 長(結晶の厚み)と THz 波出力の関係について調査を試みた。メタノール溶媒から育成された DAST 結 晶は、自然核成長において厚さ 0.3 - 0.5 mm の結晶が作製可能である。一方、メタノール溶媒から育成さ れた DASC は、自然核成長において厚さ 0.1 mm の薄板状結晶しか得られ ていない。そのため、 DASC に関して、結晶の厚さと THz 波出力の関係は未調査である。本研究では、プロトン性極性溶媒であるメタ ノールと非プロトン性極性溶媒のアセトニトリルの混合溶媒系に着目して、溶液相からのバルク結晶成長 を試みた。 DAST 結晶では、混合溶媒を用いることにより厚み方向にバルク化する傾向があった。また、 DASC に おいても同様の結果が観測されたことから、アセトニトリルを混合することにより結晶の成長方向を変化せ せることに成功した。バルク DASC 結晶(厚み 0.5 mm )から高出力・広帯域の THz 波が観測された。さら に、バルク化した DASC 結晶(厚み 0.5 mm )と DAST 結晶(厚み 0.5 mm )を用いて THz 帯の透過特性を 調査したところ、 DASC の方が透過特性に優れていることが初めて分かり、仮に DASC 結晶の速度整合 条件を明らかにすることにより DAST よりも高出力 THz 波発生が可能であると考えられる。最後に我々は、 DAST と DASC の結晶の厚さに対する THz 波出力依存性を調査した。 1560 nm 励起光源を用いた際、 DAST では、厚さ 1 mm 程度までは線形に THz 波出力が増加するが、それ以上では結晶 内で発生した THz 波が吸収されて出力が飽和する傾向があった。また 2.1 THz で速度整合することも分かった。一方 DASC では、 2.1 THz で速度不整合となる結果であった。今後、屈折率の評価及び 1 mm 以上の厚い結 晶の作製と評価が必要である。 しかし , DASC は DAST よりも透過特性が優れている点を考慮すると , 仮 に速度整合条件を満たすのであれば、素子厚をより増加することで、 DAST よりも高出力化が期待でき る。 111

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