平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/ポストドクター・GCOE研究員フ ル オ レ ン 系 材 料 と フ ラ ー レ ン 誘 導 体 に よ る 有 機 受 光 素 子 の 特 性 濵嵜 達成 大阪大学大学院 先端科学イノベーションセンター 大森研究室 ア ブ ス ト ラ ク ト 有機半導体は無機半導体にはない特徴を多く持っている。これらの特徴を生かし、光電変換機能を持 つ半導体である受光素子を有機材料を用いて作製することで、 新しい 光通信デバイスや、異なる波長に 感度を持つ素子を重ね た スキャナーのカラーセンサーなどへの応用が期待できる。本研究では、 フルオ レン系材料とフラーレン誘導体 を用いて有機受光素子を作製し、特に受光素子を光センサーへ応用する 際に重要となる、特定波長に対する高い感度と連続光パルスに対する周波数応答特性に注目し、評価 を行った。 その結果、受光素子として比較的高い感度と、数 10 MHz の動作周波数が確認できた。 近年、光電変換機能を持つ有機半導体である有機受光素子に関する研究が盛んに行われている。 し かし、太陽電池に応用するために素子の光電変換効率を向上させるための研究は 多く 行われているが、 光センサーへ応用する際に重要な高速応答性に関する議論はあまり行われていない。 本研究では有機 受光素子の高速応答性を評価するため、紫色レーザー光 (408 nm) を変調させて作り出した sine 波を連続 光パルスとして素子に照射し、素子からの出力電圧を測定した。 有機受光素子の半導体層としては、導電性高分子の一つであり、比較的安定、かつ高移動度のポリ アルキルフルオレンの誘導体である F8T2 と、フラーレン誘導体である PCBM 、もしくは TsAF の重量比 1:1 混合層を用いた。混合層は、 F8T2 と PCBM 、 あるいは TsAF の混合物を 1,2 - dichlorobenzene に溶かした 後、ウェットプロセスによって成膜した。 (F8T2 : PCBM 、 F8T2 : TsAF) この半導体層を ITO 電極と Au 電極 で挟んだ構造の有機受光素子について評価を行った。 これらの有機受光素子の青色光 (460 nm) に対する感度を評価したところ、 PCBM を用いたものは極 性をはっきりと示し、低電圧印加時から比較的高い感度を示した。一方 TsAF を用いたものは感度が劣り、 光電流を取り出すためにはより高い電圧を印加する必要があることがわかっ た。また、両極性を示すよう になった。 PCBM 、あるいは TsAF のみを半導体層とした有機受光素子を作製して特性を比較したところ、 PCBM は電子輸送性が強いために金属電極からの電子注入が支配的となり、整流性が生じるが、 TsAF はどちらの電極からも電荷の注入が起こりにくいことがわかった。これにより、フラーレン誘導体の性質の 違いが、フルオレン誘導体との混合層の性質に大きく影響していることがわかった。 紫色レーザーによる連続光パルスに対する有機受光素子の周波数応答特性を測定したところ、 F8T2 : PCBM 、 F8T 2 : TsAF 素子は共に、電圧を印加することで高速な応答を示すようになり、 1 W/cm 2 の レーザー光に対する遮断周波数は数 10 MHz 程度であった。これは有機物を用いた半導体の動作周波 数としては高速な値である。また、 F8T2 : PCBM の場合、応答特性はレーザー光の照射光強度にも強く 依存することがわかった。一方 F8T2 : TsAF の場合、レーザー光強度に対する依存性は小さいことがわか った。これを下図に示す。 図 紫色 (408 nm) レーザー光の照射光強度に対する有機受光素子の周波数応答特性 106

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