平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/ポストドクター・GCOE研究員Input image Amacrine cells image (with eye movement) Amacrine cells image (without eye movement) 固 視 微 動 を 模 擬 す る 網 膜 エ ミ ュ レ ー タ の 開 発 長谷川 潤 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 八木 研究室 ア ブ ス ト ラ ク ト 固視微動下での網膜神経活動を実時間で再構築し,二次元的な画像として可視化することのできる システムを開発した.システムはアナログ / デジタル混在型アーキテクチャを採用し,アナログ抵抗回路 網,デジタル回路,汎用デジタル計算機から構成される.本システムに時間的に変化する自然画像を提 示することで,固視微動下での網膜神経活動の模擬が可能であることを示した. 網膜では、光を検出するとともに、視覚情報処理が最初に行われるが、網膜神経細胞の視覚情報処 理上の機能的役割が完全に理解されたとは言えない.我々は,動的で複雑な状況に まで対応できる実 時間再構成手法を目指し,アナログ / デジタル混在型アーキテクチャを採用することで,一過性応答を示 すアマクリン細胞の活動を実時間で模擬する網膜エミュレータを開発した.本研究では,特に眼球運動 下における網膜神経細胞の活動を実時間で可視化することを特徴としている [ 1, 2] . 活動中のヒトの眼球は決して完全に静止することがなく,たとえ固定した一点を注視しているときでも常 に微動しており,これを固視微動と呼ぶ.固視微動の主要な成分であるドリフトの動特性を模擬するため, Linear Feedback Sh ift Register (LFSR) を利用したデジタル回路を新たに開発し,ランダムに画像フレーム をシフトさせる方式を採用した.動作周波数は毎秒 75 フレームであり、有効画素領域は 96 × 96 ピクセル である.図1には,動きのある自然画像(人物が手を動かしている状況)に対するアマクリン細胞活動の模 擬結果を示した.左側パネルは入力画像を示している.固視微動がない条件(中央パネル)ではアマクリ ン細胞は動いている手の部分だけに応答が見られるが,固視微動下(右側パネル)では動きの少ない顔 や体部分の輪郭線にも動いている手の 部分と同様に応答が見られる. 以上の様に,神経細胞の活動を実時間で再構築できることは,生体視覚系を理解する上で大きな利 点となる.従って,本システムは生体視覚系の視覚情報処理を理解するための有用なツールとなる. 参 考 文 献 [1] Hasegawa, J. and Yagi, T., ``Real - time emulator of dynamical features of sustained and transient channels in the vertebrate retina,'' in Proc. 2009 IEEE Biomedical Circuits and Systems Conference, Nov.26 - 28, Beijing, China, pp. 197 - 200, 2009. [2] Hasegawa, J. and Yagi, T., “Emulation of retinal cell responses during fixational eye movements,” IEICE Electronics Express , vol. 7, no. 3, pp. 184 - 189, 2010. 105

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