平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/ポストドクター・GCOE研究員二 方 向 指 向 性 漏 え い 同 軸 ケ ー ブ ル を 用 い た 位 置 検 出 方 式 に 関 す る 研 究 西川 健一 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 小牧 研究室 ア ブ ス ト ラ ク ト 携帯電話端末機に GPS (Global Positioning System) が搭載されるなど,携帯端末の位置検出に対す る要求が高まっている.本研究では,二方向に指向性を持つ漏えい同軸ケーブルを用いた二次元位置 検出方法を提案した.提案方式では,給電点から入力され終端反射前に放射される二つの電波と終端 反射を経た後に放射される二つの電波の合計四つの電波の到着時刻の差分を用いる.これら四つの電 波の到着時刻の差分から位置を算出するための式を導き,シミュレーションにより提案方式による位置 検出が原理的に可能であることを明らかにした. 漏えい同軸ケーブルとは,電気信号を伝送するケーブルの役割と電 波を放射・吸収するアンテ ナの役割という二つの役割を兼ね備えているケーブルである.地下鉄や地下街では,火災や事故 発生時のための地上と地下の間の非常連絡網を確保することは消防法で義務付けられており,多 くの建物内に 漏えい同軸ケーブル が非常連絡網である防災無線設備として既に敷設されている. 近年, 2.4GHz 帯を伝送可能な広帯域な 漏えい同軸ケーブル が登場するなど,公共スペースにお ける通信基盤は整備されつつある.このような通信基盤をそのまま用いて,無線端末の位置検出 を行うことは,新たな工事を必要としないため,迅速にサー ビスを提供できるというメリットを 有する.このため,漏えい同軸ケーブルを用いた位置検出方式の研究が為されてきた.従来の提 案方式は,一方向にのみ指向性を持つ漏えい同軸ケーブルを用いた二次元位置検出方式であり, 給電点から入力され終端で反射する前に放射される電波と終端反射を経た後に放射される電波の 二つの電波の到着時刻を用いて位置を算出していた.しかしながら,この従来方式は電波の到着 時刻を用いる方式であるため,送信側と受信側の時間同期が必要とされる方式であった.本研究 では,時間同期が不要となる,電波の到着時刻の差分の みで位置検出するために,漏えい同軸ケ ーブルを用いた位置検出方式として,二方向に指向性を持つ漏えい同軸ケーブルを用いた二次元 位置検出方式を提案した. 漏えい同軸ケーブル は,一般的な同軸ケーブルの外部導体部分に放射孔と呼ばれる開口部を設 け,その放射孔から信号が電波となって放射される. 漏えい同軸ケーブル の内部を伝搬する信号 の波長が放射孔の大きさよりも十分に長い場合,放射孔から放射される電波は微小ダイポールア ンテナから放射される電波と等価と見なすことができ, 漏えい同軸ケーブル はケーブルの長手方 向に微小ダイポールアン テナが放射孔の間隔で連続的に配置された構造となる.複数の放射孔か ら放射された電波は,位相の違いにより強め合いや弱め合いを起こすため, 漏えい同軸ケーブル が指向性を持っているものと等価であると見なすことが出来る. 提案方式は,二方向に指向性を持つという特徴を有する漏えい同軸ケーブルを用い,終端に終 端器を取り付けずに位置検出を行う.終端器を取り付けない事で,給電点から入力された進行波 は,終端で反射し反射波として同軸ケーブル内を逆向きに伝送する.漏えい同軸ケーブル自体が 二つの方向に指向性を持っているため,これらの進 行波と反射波はそれぞれ二方向に指向性を持 つ電波を放射する.そのため,漏えい同軸ケーブル全体として合計四波の電波が放射される.こ れら四波の電波は,伝搬経路が異なるため伝搬時間が異なる.四波を受信したときの到着時刻の 差分を測定することで,伝搬経路の距離差が判明し位置を検出することができる.到着時刻の差 分と伝搬経路の距離差の関係より,位置を推定するための算出式を求めた. 本研究では,到着時刻の差分のみを用いて位置を推定するための方式を提案した. FDTD 法を 用いた電磁界シミュレーションを行い,得られた受信波から求められる電波の到着時刻差を,位 置を求める計算式に代入し位置を求めた.このシミュレーションの結果より,提案方式を用いる 位置検出が可能であることを明らかにした. 104

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