平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/ポストドクター・GCOE研究員図 1 光学顕微鏡写真 ( a ) 1065 nm 図 2 Laser - SQUID 顕微鏡画像 0.5 mm ( b ) 780 nm 0.5 mm 0.5 mm 磁場 [pT] 磁場 [pT] L a s e r - S Q U I D 顕 微 鏡 に よ る 多 結 晶 シ リ コ ン 太 陽 電 池 の 評 価 中谷 悦 啓 大阪大学大学院 基礎 工学研究科 システム 創成専攻 糸崎 研究室 アブストラクト Laser-SQUID顕微鏡は,磁場センサとレーザを組み合わせた、半導体評価装置である。この装置を用いて多結晶シリコン太陽電池を評価したところ、同一サンプル上において、他の部分と異なる特性を持つ結晶粒や結晶粒界がみられた。さらに使用するレーザの波長として、1065 nmと780 nmの2種類で測定を行うと、一部の結晶粒や結晶粒界において、その特性に波長依存性が存在することがわかった。 半導体にバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを持った光を照射すると、電子‐正孔対が発生し、その拡散長以内に内部電界が存在すると光励起電流が流れる。Laser-SQUID顕微鏡では、この電流による磁場を超高感度な磁気センサであるSQUID(Superconducting QUantum Interference Device)で測定する。レーザをサンプル表面に照射し、サンプルの裏側にSQUIDを配置した。レーザ照射点とSQUIDとの位置関係を固定して、サンプルのみを2次元スキャンして磁気画像を得た。 サンプルとして、図1に示すような、多結晶シリコン太陽電池を用いた。図1は、レーザを照射した面であり、いくつかの結晶が存在しているのが見える。右寄りの位置に、縦に通っている筋は金属電極である。このサンプルの、レーザ波長依存性について調べた。780 nmと1065 nmのレーザを用い、他の測定条件は同一にし、Laser-SQUID顕微鏡画像を取得したところ、図2のような結果となった。電極上では磁場が発生せず、また、左上隅に磁場強度の最も強い部分があるという、磁場強度分布のおおまかな様子は同じ傾向を示したが、図1で中央に見える結晶粒については、1065 nmのレーザを使用した場合に、この部分でほぼ一様に磁場強度が低下しており、その存在を確認することができた。一方で、780 nmのレーザを使用した場合には、この結晶粒の存在をLaser-SQUID顕微鏡画像から確認することはできなかったが、この結晶粒の中央付近を左上方向から右下方向へ斜めに横切る点の列のコントラストは向上し、確認しやすくなっている。この結晶粒に関して、2つの波長のレーザを使って、Laser-SQUID顕微鏡で評価することで、電気-光学的特性の波長依存性が、他の結晶粒とは異なることがわかった。また、別の箇所の測定で、ある結晶粒界において、1065 nmのレーザを用いた場合には、粒界に沿って強い磁気信号が観測されたが、780 nmのレーザを用いた場合には、観測されなかった。結晶粒界についても、電気‐光学的特性の波長依存性のあるものが存在することが明らかとなった。103

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