平成21年度 実績報告書
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教育研究プラットフォームIDER研究成果/ポストドクター・GCOE研究員半 導 体 表 面 に お け る 相 互 作 用 力 と ト ン ネ ル 電 流 の 同 時 測 定 澤田 大輔 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 森田 研究室 ア ブ ス ト ラ ク ト 非接触方式の原子間力顕微鏡 (AFM: Atomic Force Microscopy) と走査型トンネル顕微鏡 (Scanning Tunneling Microscopy) は実空間で物質表面の局所的な物性情報を測定することが可能な手法であるこ とから,材料・デバイスの評価において現在広く用いられている.最近では双方の測定において得られる 物理量の関係が注目されている.本研究では AFM と STM を同時に測定することで相互作用力とトンネ ル電流を同時に測定し,化学結合と トンネル電流との間に相関があることを確認した . AFM や STM は表面形状の原子分解能観察だけではなく, A FM 測定では化学結合力やポテンシャル が, STM 測定では局所状態密度 (Local Density of States) が分かるなど, AFM, STM どちらも原子レベル での 表面 物性測定が可能な手法である. 本研究では AFM と STM の同時測定により,化学結合力と LDOS に起因するトンネル電流との相関について調べた. 試料については,標準的な半導体材料である Si(111) - (7 × 7) 表面を用い,表面の汚染を防ぐために, 実験は全て 5 × 10 - 9 Pa 程度の超高真空中で,室温環境下で行った. また, PtIr コートされたカンチレバー 探針を用いることで,相互作用力とトンネル電流を測定することが可能となる. Atom Tra cking 法を用いて 室温環境下で個々の原子についての測定を行った. 図 1 は V s = - 400 mV で Si(111) - (7 × 7) 表面の Faulted Half のセンターアドアトム ( 図 1 挿入図中の矢印 が示す原子 ) 上で測定して得られた,化学結合力とトンネル電流の探針 - 試料間距離依存である.化学結 合力については,探針が試料に近づくと引力が働き,それから更に近づくと斥力が働くことを示している. 一方トンネル電流は,探針が試料に近づくと指数関数的依存をして増加するが,ある探針 - 試料間距離で 急落している. 2 つの曲線を比較すると,化学結合が生じている領域においてトンネル電流が急落してい ることが分かる.理論計算により化学結合と LDOS の相関が示唆されているこのトンネル電流の急落の現 象を,本研究では化学結合力とトンネル電流の同時測定により実証している. 図 1 化学結合力 ( F SR : 破線 ) とトンネル電流 ( I t : 実線 ) の探針 - 試料間距離依存性. 挿入図中の矢印で示した原子の真上で測定している. V s = - 400 mV, A = 20.6 nm, f 0 = 276738.3 kHz, k = 23.6 N/m. 98

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