平成19年度実績報告書
60/126

2.6.1 集積回路技術 谷口研二電気電子情報工学専攻・教授拠点リーダー,部門長2.6.1.1 はじめに MOSデバイスに代表される半導体デバイスの新しい物理現象や新規デバイスを回路・システムへ応用することを目的として,デバイス・回路・システムに関する横断的な研究開発を行っている.特に,CMOSデバイスやTFTなどのシリコン系デバイスを研究の基盤としている.また,集積回路とセンサを融合し,デジタル信号処理技術やアナログ信号処理技術を駆使し,アナログ回路やセンサの高機能化を目指した研究も実施している.平成19年度の具体的な研究成果は以下の通りである.2.6.1.2 弱反転動作を利用した0.5V動作CMOS ΔΣ変調器 [参考文献1] MOSFETの弱反転動作を用いた生体信号センシング用ΔΣ変調器を開発した.すべての MOSFETを確実に弱反転領域で動作させるため,電源電圧は500 mVと設定して低消費電力化を図り,電池による長時間の駆動が可能となる設計を行った.ΔΣ変調器内のオペアンプのスルーレートが変調器の特性に大きな影響を与えることをシミュレーションで確認し,スルーレートを強化するAdaptive Biasオペアンプと定バイアスのオペアンプを用いてΔΣ変調器を設計・試作・測定した.図2.6.1.1にチップ写真を示す.クロック周波数5 kHzのとき,ピークのSNDRはそれぞれ33 dB,22 dBとなり,信号入力域の全域にわたり,約10 dBの改善が得られた.消費電流は26 nAであった.また,スルーレート・ブースト・オペアンプを用いることで,クロック周波数を増加させても通常のオペアンプと比較してSNDRの劣化が少なくなることを確認した.2.6.1.3 DEMによるスイッチトキャパシタ可変増幅回路の高精度化 [参考文献2] 負誘電体・誘電体界面を伝播する低次元光波である表面プラズモンポラリトンを利用したナノ光導波路とナノ光デバイスの研究を行なっている.特に,金属ギャップ導波路における2次元光波の屈折率ガイド,テーパー構造による超集束,直角曲がり構造,T字型分岐路などの研究を行ないナノ光導波路の高機能化を進めている.今年度は,主にT字型分岐路に関する研究に注力し,シミュレーションによるナノ光導波路の不連続点において反射が起こる原因の解明と,分岐部での反射損失を大幅に低減できる新しい分岐構造を考案した.また,光ファイバ中に低次元光波を結合させるための回折格子の作製を行ない,表面プラズモンの励起に伴う導波モードの存在を実験により確認した.2.6.1.4 システム・オン・ガラスのためのTFTデバイスモデルの開発 [参考文献3,4] 液晶ディスプレーの高性能化やシステム・オン・ガラス化に伴い、近年これに用いられるPoly-Si TFTの回路シミュレーション用高精度デバイスモデルの構築が強く求められている.平成19年度では,高密度のトラップを含むTFTの小信号交流特性を理論的に解析した.2次元デバイスシミュレータを用いて求めたアドミタンスは,トラップへの電子の捕獲・放出効果を考慮した伝送線路モデルを用いて記述することが可能である.さらに,チャネル抵抗および電子捕獲の時定数を考慮することで,さらに簡易な等価回路モデルに帰着させることが可能であることが分かった.このような高精度TFTデバイスモデルなどを活用して,液晶ディスプレー駆動回路の主要ブロックであ--インテグレーション支援部門60

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です