平成19年度実績報告書
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2.5.1 次世代電子デバイスシミュレーション技術の開発森伸也電気電子情報工学専攻・准教授部門長2.5.1.1 はじめに 半導体デバイス技術の発展はめざましく,2015年にゲート長は10 nmになるといわれている.その頃には比例縮小則によるMOSFETの高性能化が極めて困難になると予想されている.このスケーリング限界を打破するために,現在のシリコンMOS型デバイスに代る新構造・新材料デバイスが数多く提案されている.そのような膨大な選択肢の中からデバイスとして最も適した構造や材料を見つけ出すためには,実験と並行して理論的予測に基づくシミュレーションが必須である.本研究の目的は,次世代新構造・新材料デバイスの電気的特性を計算可能な量子輸送シミュレータを開発し,デバイスの性能予測をおこなうことである. 我々は,上記の目的を達成するため,極微細MOS型デバイスに対する量子輸送デバイスシミュレータ SQUATS (STARC† Quantum Transport Simulator) を開発している.SQUATSでは,輸送モデルとして非平衡グリーン関数法を用いており,扱うデバイス構造や対象とするデバイス特性などに応じて下記のバージョンを開発している.(†Semiconductor Technology Academic Research Center) 本年度のおもな研究成果は以下の通りである.2.5.1.2 ダブルゲート型MOSFETにおけるフォノン散乱の影響ーションによる検討をおこなう必要がある.さらに,バルク型MOSFETの反転層厚より薄いSOI MOSFETにおける移動度向上や,電子の波動関数変調による不純物散乱制御など,新しい技術の導入による移動度向上の可能性もデバイスの微細化が進み現実的となってきており,シミュレーションによる最適化が急務となっている.評価解析支援部門名 称 次 元 バンドモデル 散乱過程 特 徴 SQUATS-T3D 3次元 強結合近似 バリスティック 面方位,歪,新材料 SQUATS-E3D 3次元 有効質量近似 フォノン,界面ラフネス 大きなデバイス SQUATS-T2D 2次元 強結合近似 バリスティック 面方位,歪,新材料 SQUATS-E2D 2次元 有効質量近似 フォノン 大きなデバイス SQUATS-T1D 1次元 強結合近似 バリスティック バンド間トンネル,歪 単純なスケーリングのみでは,デバイス性能の大幅な向上が望めなくなってきており,移動度向上などの技術を併用することが重要となってきている.一方で,短チャネル効果を抑制するため,ダブルゲート (DG) 型MOSFETやFin型デバイスなどの新しいデバイス構造の導入も検討されている.しかし,DG MOSFETやSOI MOSFETのような閉じ込め構造では,電子状態がサブバンド量子化されるため,散乱確率や輸送特性がバルクの場合と大きく異なる.そのため,これまでの移動度向上技術の有効性は自明でなく,シミュレ図2.5.1.1 ゲート長40 nmのダブルゲート型MOSFETにおける電子密度スペクトル.54

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