平成19年度実績報告書
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2.4.3 機能性材料の結晶化と応用に関する研究吉村政志電気電子情報工学専攻・准教授2.4.3.1 はじめに 次世代電子デバイス開発において,様々な分野で機能性結晶が重要な役割を担っている.担当者らの研究グループでは結晶育成をコア技術として,半導体基板等の微細加工用レーザ,マスク欠陥検査用レーザ光源に用いられる非線形光学結晶の開発,次世代パワーデバイスや高輝度LED,LD等の開発に不可欠な低転位窒化物半導体基板結晶の開発,有機FET用単結晶作製技術の開発,及びテラヘルツ波光源用の有機非線形光学結晶の開発を行っている.本年度は,紫外光発生用結晶の開発と応用,窒化物半導体結晶の開発の現状について簡単に報告する.2.4.3.2 非線形光学結晶の高品質化と新型紫外レーザ光源の開発 ホウ酸系非線形光学結晶CsLiB6O10(CLBO)は,波長300nm以下の紫外光を高効率で発生できることが知られている.独自開発した育成技術により従来に比べてレーザ損傷耐性,均質性などが向上し,ベンチャー企業への技術移転を通して製品化に至っている.一方で,産業界での高出力化・短波長化の需要を受け,結晶の損傷機構の解明と波長変換性能の向上が継続して求められている.最近,結晶内部に含まれる水不純物を低減させることで,紫外光発生時の自己吸収と熱位相不整合が抑制できるという新しい知見を見出した.発熱メカニズムは現在も解明できていないが,この脱水状態の波長変換デバイスによって,良質なビーム品質の紫外光が得られ,温度条件も一定で,安定した出力の連続運転ができることが分かった.レーザ微細加工装置の開発を進めている三菱電機(株)との共同研究では,脱水CLBOの組み合わせによって波長213nmの紫外光の世界最高出力10.2W(従来CLBOの約2倍)が達成できた(CLEO/Europe 07 CA5-3-TUE).これら育成・デバイス技術の開発と並行し,本年度は以下の新型レーザ光源の開発にも取り組んだ. アリゾナ大との共同研究では,発振波長の設計自由度を有し,高出力化に適した新しい光励起方式InGaAs系垂直外部共振器面発光半導体レーザ(Vertical External Cavity Surface Emitting Laser,材料開発支援部門VECSEL)によって連続波・単一周波数の976nm光を発振させ,その第2高調波発生(SHG)によって気体Ar+レーザと同一波長の488nm青色光を得た(最高出力1W).さらに,上記CLBOによって2段目の外部共振器SHG(図2.4.3.1)を行い,励起光635mWから出力215mWの244nm紫外光を得ることができた(CLEO2008 CPDA2).応用例として,光ファイバーへのFBG作製も実施した.本方式による紫外光発生は世界初の試みであり,VECSELを用いた新しいタイプの全固体紫外レーザが,今後活発化することが期待される.図2.4.3.1 連続波244nm光発生用共振器.50

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