平成19年度実績報告書
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2.4.2 有機材料による電子・光デバイスの開発大森裕先端科学イノベーションセンター 電子材料・システム系分野・教授2.4.2.1 はじめに 次世代型の電子システムを構築するために, 有機材料と無機材料の利点を生かした「有機-無機ハイブリッド新機能材料の創製と新機能デバイス・システムの構築」を研究課題としている.当分野では新電子材料と光・電子システム分野を融合した形態をとり,フレキシブル素子,プリンタブル電子・光デバイスの研究開発と次世代型の新電子システムの研究に取り組んでいる. 主な研究内容は,下記の4項目である.(1) 有機材料によるフレキシブル電子・光集積デバイスに関する研究開発 (2) 有機電子デバイスの物性評価とデバイス物理の解明 (3) 有機ELディスプレイ,有機トランジスタに関する研究 (4) プリンタブル有機電子デバイスの研究開発 本稿では,当分野で研究を展開する「有機材料による電子・光デバイスの開発」に関しての2つの研究成果を報告する.2.4.2.2 フレキシブル有機ELに向けた塗布法による電極形成 有機デバイスにおいて,電極形成は真空蒸着法により行われるのが現状であるが,有機デバイスを印刷技術で作製するためには,電極形成も塗布法で作製することが有利な条件となる.また,有機EL デバイスの陽極には他のフラットパネルディスプレイと同様に酸化インジウム錫(ITO)が用いられるが,近年のフラットパネルディスプレイの量産により,特に希少金属であるインジウムの枯渇に関する資源問題,またそれによる価格の高騰が危惧され始めている.そのため,ITO陽極に替わる新たな電極材料が求められている.更にITOを厚く形成した場合,打鍵等の衝撃を加えた時に割れやすいという欠点が存在する.フレキシブル素子を実現するには,機械的な応力によりひび割れが生じるITOに代わるフレキシブル性の良い電極を開拓する必要がある.打鍵試験機を用いた応力耐性を調べたところ,ITO陽極を用いた有機EL素子を数万回打鍵後測定するとITO電極に割れに伴う発光面にひび割れたダークスポットが観測されるのに対し,10万回打点後も応力によりPEDOT:PSS電極が割れにより発光面に亀裂が生じることはなく,応力に対して耐久性に優れた材料開発支援部門 最大数千cd/m21万cd/m2以上10万回打鍵後素子構造改善•ウェットプロセスによる電極形成•ITOに代わる電極材料の探索高導電性高分子を陽極に適用(10万回打鍵後)ITO電極を用いた素子•外部からの応力に対する耐性フレキシブル有機EL素子の実現最大数千cd/m21万cd/m2以上10万回打鍵後素子構造改善•ウェットプロセスによる電極形成•ITOに代わる電極材料の探索高導電性高分子を陽極に適用(10万回打鍵後)ITO電極を用いた素子•外部からの応力に対する耐性フレキシブル有機EL素子の実現本研究では,高導電性高分子に着目して,塗布法によって形成した陽極を用い,緑色発光材料のアルミキノリノール錯体を発光層とした有機EL素子を作製した.更に素子構造の改善として高分子電極上に塗布法にて成膜可能な正孔注入層を形成することで,電極の凹凸の緩和,正孔輸送層との密着性の改善,及び発光層の平坦化に伴う発光層中の電界の均一化を達成し,高分子電極を用いた素子から,発光輝度1万cd/m2以上の素子特性を達成した. また,プラスチック基板上に作製した素子を用いて,48

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