平成19年度実績報告書
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2.3.4 超高速光A/D変換技術北山研一電気電子情報工学専攻・教授2.3.3.1 はじめに近年、無線通信で用いられてきたアナログ・ディジタル変換器とディジタル信号処理を用いた信号歪1つである光ファイバ中の3次の非線形光学効果(光カー効果)の応答速度はフェムト秒(10-15)オーダーであるため,非線形光学効果を用いた超高速光信号処理では,数百ギガ~数テラビット(1012bps)以上の動作速度を得ることが原理的に可能である. 本報告では、非線形光ループミラー(NOLM)の多周期特性を用いた超高速光A/D変換における量子化・符号化の動作原理を説明し、次に今年度に得られた160GSample/sでの3ビットA/D変換の実験結果について述べる。2.3.4.2 超高速光A/D変換の動作原理 NOLMを用いた超高速光A/D変換の構成を図2.3.4.1上部に,NOLMの伝達関数を図1左下に示す.この全光A/D変換器は標本化されたアナログ信号を複数台の異なる周期の伝達関数を持つNOLMへと入力し,その伝達関数を用いて量子化,符号化を行うことを特徴とする。そして、それぞれのNOLMから出力された信号をしきい値処理することにより,図2.3.4.1右下のようなGray符号の光ディジタル信号を出力する. 次に、NOLMの動作原理について説明する.NOLMのループ中で時計回りのプローブパルスは高非線形ファイバ中で制御パルスとして入力されるアナログ信号から相互位相変調(XPM)による位相変調 を受ける.一方,反時計回りのプローブパルスが受ける位相変調 は制御パルスのデューテイ比が小さければ無視できるほど小さくなる。透過ポートから出力されるプローブパルスの強度は,位相変調の差 =| - |によって変化し,透過率はT=(1-cosとなる。位相変調の大きさは重畳される制御パルスの強度に比例するため,図2.3.4.1左下のように,入力光の強度に依存して周期的に出力が変化する伝達関数が得られ、全光アナログ・ディジタル変換に必要な周期特性を得ることフォトニックデバイス部門 図2.3.4.1 全光A/D変換器の動作原理と構成 補償技術やOFDM等の高度なディジタル信号処理を光通信に適応した研究が進められており、伝送速度の高速化に伴い超高速、広帯域のアナログ・ディジタル変換器が必要となっている. しかし,既存の電子デバイスによるA/D変換では,サンプリング時に時間的な揺らぎが発生し,正確にアナログ信号の値を読み取れず、100Gビット毎秒程度以上の進展は見込めない.そこで、我々は光信号処理を用いてテラヘルツ級の超高速A/D変換技術の実現を目指している.光通信で用いられているモードロックレーザ技術では,タイミングジッタは数十フェムト(10-15)秒程度に抑えることが可能であり,動作速度の向上が期待できる.また,非線形光学効果のCW φφCCW φCW φCCW ∆φ )/2 ∆φ φCW 38

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