平成19年度実績報告書
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2.3 フォトニックデバイス部門 兒玉研究室では,2007年度は,高エネルギー密度状態を利用することで通常の光学系や制御デバイスでは取り扱うことが困難である超高強度光や高密度荷電粒子ビームなどを直接制御を行うプラズマフォトニックデバイス並びにそれらを利用した超小型電磁波源の開発研究を行った.また革新的電子デバイスを創造するために,レーザーによる超高圧を利用して全く新しい金属性物質の発現やプロセスの開発を行っている.本年度は,極超高圧であるが,温度の低い状態である高エネルギー密度固体を探索するための新しいレーザー駆動低エントロピー圧縮技術の開発を行った.さらに固体金属水素に関する理論的評価による新現象の可能性を初めて明らかにした. 井上研究室では,量子暗号方式として,差動位相シフト(Differential Phase Shift:DPS)と呼ばれる新しい方式を提案し,その研究開発を進めている.本方式は,構成が簡便,秘密鍵供給効率が高い,光子数分岐攻撃と呼ばれる盗聴法に強い,などの特徴を有する.今年度はこの量子暗号方式について,(1)波長変換型光子検出器を用いるシステムの偏波無依存化,(2)デコイパルスを用いる改良プロトコルの提案,(3)量子雑音を利用する改良プロトコルの提案,などを行った. 岡村研究室では,散乱光を用いた生体やコロイドなどの多重散乱媒質内部の光計測,光の波長オーダで屈折率や構造が周期的に変化したフォトニクス結晶の光集積回路デバイス応用,電波と光波の融合通信に不可欠なマイクロ波フォトニクス,大容量光通信に必要な超高速光制御デバイスなどの光技術,および,使用環境に適応して特性を調整可能なアンテナに関する研究,RFIDや無線送電,位置計測などの電波応用技術などの無線技術,さらに,これら技術を融合し,来るべき「ユビキタスネットワーク」構築に寄与すべく研究に取り組んでいる. 北山研究室では,近年,無線通信で用いられてきたアナログ・ディジタル変換器とディジタル信号処理を用いた信号歪補償技術やOFDM等の高度なディジタル信号処理を光通信に適応した研究を進めており,伝送速度の高速化に伴い超高速,広帯域のアナログ・ディジタル変換器が必要となっている.非線形光ループミラー(NOLM)の多周期特性を用いた超高速光A/D変換における量子化・符号化原理を確認し,160GSample/sでの4ビットA/D変換を実現した.近藤研究室では,ナノテクノロジーで作製される新素材のフォトニック結晶を,半導体レーザ技術へ融合させることにより,IT社会の発展の足かせとなる半導体レーザの高速化の問題をブレークスルーしている.電流注入によりGaInNAs量子井戸活性層で発生した光は,共振器内に定在波として蓄積され,フォトニック結晶に囲まれたレーザ共振器は,極微小閾電流でレーザ発振に至る.レーザ光は,光導波路より出力される.本年度は,レーザ光を発生するGaInNAs量子井戸活性層の高品質化に注力し,その成果を中心に発表を行った. 栖原研究室では,曲線グレーティングとリッジ構造活性チャネルを用いた分布ブラッグ反射型(DBR)レーザーを基本形として,非線形光学デバイスの励起光源や各種光集積回路の光源としての応用を目指した波長780nm帯の高出力・高スペクトル純度の半導体レーザーの設計・作製・性能改善を行った.2 研究部門成果報告 31

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