平成19年度実績報告書
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「産業の米」と言われた集積回路は過去30年間にわたって急速な発展を続け、その情報処理性能は桁違いに向上している。この高性能な集積回路を組み込んだ電子デバイスが将来のユビキタス・アンビエント社会では重要となる。しかし、次世代電子デバイスの開発には、エレクトロニクス材料やデバイスに関する深い知識を持った技術者だけでなく、技術全般に気配ができるディジタル思考の技術者の協力が必須である。高い視点から構成要素技術全般を見渡せる技術者の養成には、個別学問分野で超一流の研究を行ってきた従来型の専門教育に加え、要素技術をバランス良く統合するデザイン型の教育が望まれる。本グローバルCOE「次世代電子デバイス教育研究開発拠点」はこのようなユビキタス社会を支える電子デバイスの開発に向けて計画された。研究室の壁を超えて若手教員と大学院学生とが協力して組み上げたIDER(Innovation oriented Dynamic Education Research unit)が組織の中核となり、将来の安全・安心な社会の実現に向けた次世代電子デバイス(パワー、センサ、フォトニック)の研究開発を行う。IDERは単なるデバイス開発プロジェクトではなく、若手教員と大学院学生とが研鑽を重ねて創造的な活動を実践する場と位置づけている。事実、過去1年間のIDERの活動を通して、本GCOEの構成員(若手教員・大学院学生)の意識改革が始まっている。研究室で学んだ深い専門知識を有する若手同士が真摯に意見を出し合うことで新しいアイディアが生まれることや、ともすれば各論的な議論に陥り、相互理解が難しかった各種技術も突き詰めれば本質的な共通概念が存在することが理解され始めている。 さらに、大学院学生対象に行っている「シリコン学」教育では、①コミュニケーション力、②リーダーシップ力などの社会人としての基礎力養成に加え、将来、一流の研究者・技術者が備えるべき資質(①膨大な実験データから形式知を抽出する力、②形式知から仮想実験を行える力)を若手の構成員に伝えることに重点を置いている。インターネットなどで簡単に取り出せる百科事典的な”知識”より、技術者としての”智恵”を身に付けることが、将来、大切であること。そして、本拠点で教育を受けた学位取得者(PhD)が、将来、専門外の技術分野に進出しても超一流の研究者・技術者として活躍できる自信をつけさせることが本拠点の目的である。 この一年間の活動経過を振り返ってみると、年配の教員方が中心となって拠点の枠組みを作り、その枠組みの中で若手教員が積極的に拠点の運営を行い、さらに学生組織である”COE学生会”が参画することで全員参加型の教育研究拠点ができつつある。 今後も、世界で活躍する”真のDoctor of Philosophy”を大勢輩出するグローバルCOE拠点として教育・研究活動を進めてゆきたい。 巻頭言拠点リーダー 谷口研二グローバルCOEプログラム「次世代電子デバイス教育研究開発拠点」 3

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