平成19年度実績報告書
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2.2.5 電波・光波デバイス技術とシステム応用永妻忠夫基礎工学研究科 システム創成専攻・教授2.2.5.1 はじめに 当研究室(光・量子情報科学グループ)では,未開の電磁波領域を新しい通信・センシング技術へ応用することを狙ったテラヘルツ波フォトニクス,ピコ・フェムト秒領域で光波を自由自在に操る時空融合型の光制御技術,非常に小さなナノ空間に閉じ込められた低次元光波を操作するナノフォトニクス,ナノ構造を利用した黒体輻射の制御技術などの基礎的研究から,3次元画像表示技術を始めとするシステム応用研究まで,電波(エレクトロニクス)から光波にいたる最先端の光・量子情報科学の研究に取り組んでいる.当該年度の各テーマの概要と研究成果は下記のとおりである.2.2.5.2 テラヘルツ波フォトニクスに関する研究[1-3] フォトニクス技術と高周波エレクトロニクス技術とを融合する独自のアプローチにより,ミリ波帯(30GHz~300GHz)・テラヘルツ帯(100GHz~10THz)電磁波の発生・検出のための基盤技術の研究,ならびにそれらを物質分光,イメージング,無線通信などに応用する研究を展開している.今年度は,電気光学サンプリング(Electro-Optic Sampling: EOS)技術を利用して,高速デバイスや集積回路の電気信号(電波)波形を計測するための技術(帯域>300GHz)を立ち上げた.また,その感度を向上させることを目的として,センサー材料となるEO結晶に広帯域アンテナを付加する手法を検討し,2GHzのスケールモデルで約10dBの感度増強が可能であることを確認した.また,EO結晶の周波数依存性を調べるため,斗内研究室の支援のもと,代表的なEO結晶であるLiTaO3のテラヘルツ帯における屈折率を測定した.その他,ミリ波・テラヘルツ波の通信,イメージング応用に関する内外のセミナーや招待講演を数多く行なって研究の動向と重要性を広くアピールし,同技術分野の発展のために尽力した.2.2.5.3 ナノフォト二クスに関する研究[4] 負誘電体・誘電体界面を伝播する低次元光波である表面プラズモンポラリトンを利用したナノ光導波路とナノ光デバイスの研究を行なっている.特に,金属ギャップ導波路における2次元光波の屈折率ガイド,テーパー構造による超集束,直角曲がり構造,T字型分岐路などの研究を行ないナノ光導波路の高機能化を進めている.今年度は,主にT字型分岐路に関する研究に注力し,シミュレーションによるナノ光導波路の不連続点において反射が起こる原因の解明と,分岐部での反射損失を大幅に低減できる新しい分岐構造を考案した.また,光ファイバ中に低次元光波を結合させるための回折格子の作製を行ない,表面プラズモンの励起に伴う導波モードの存在を実験により確認した.2.2.5.4 熱輻射の制御技術に関する研究[5] タングステン表面にマイクロキャビティアレイを形成し,熱輻射スペクトルを構造により制御する研究を行なっている.特に,擬似表面プラズモンによる熱輻射,シリコンカーバイドの表面フォノンポラリトンを利用した高い指向性をもつ熱輻射について研究を展開している.今年度は,マイクロキャビティアレイによる熱輻射スペクトル制御におけるエネルギー収支,ならびにマイクロキャビティアレイの構造とスペクトルの関係を実験的に明らかにした.--センシングデバイス部門26

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