平成19年度実績報告書
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2.2.1 カーボンナノチューブの作製制御とデバイス応用片山光浩電気電子情報工学専攻・教授部門長2.2.1.1 はじめに 本グループでは,電気伝導特性,形状、強度・柔軟性・耐腐食性等の面で優位性をもつカーボンナノチューブ(CNT)に着目し,その特性を活かした新機能デバイスを開発する研究を進めている.同時に,ナノレベルでのものづくりに適した計測技術および表面科学的研究にもとづいたアプローチとして,CNT探針を用いた走査トンネル顕微鏡(STM)等の極限計測技術の開発,および物質表面での原子の挙動に関する研究も進めている.ここでは,CNT のデバイス応用に向けた試みとして,ガスセンサ,電子エミッター,およびナノプローブの研究開発について報告する.2.2.1.2 超高感度ガスセンサ1) 環境基本法では,大気汚染に係る環境基準が定められており,環境基準に係るガスについては,ppb オーダーの極微量検知,高速な応答・回復,室温動作が可能なセンサが必要とされている.そこで,我々は,従来型センサ基板に単層カーボンナノチューブ(SWNT)のネットワークを直接成長させたものを基本構造とする,新しいタイプのガスセンサを開発し,高スループットで作製可能,ppb オーダーの極微量検知,室温動作等の優れた特徴をもっていることを実証してきた.しかし,実用化のためには,ガス分子が複数存在する環境下でガス種を選別して検知することが必要となる.このためには,特定のガス分子と反応するナノ材料,例えば,触媒ナノ粒子で SWNT を修飾することが有効である(図2.2.1.1).本研究では,SWNT を Pt ナノ粒子で修飾することで,一酸化炭素(CO)の高感度センシングを実現した.電子ビーム蒸着により Pt を SWNT に修飾した(図2.2.1.2)結果,室温で CO の高感度検知(1 ppm)が可能であることがわかった(図2.2.1.3).さらに,Pt 修飾による CO の検知メカニズムは,Pt ナノ粒子上の CO の酸化反応に由来していることを突き止めた.試作したセンサは,水素に対してはほとんど応答せず,CO に対する選択性が高いことがわかった.さらに,10 ppm 以下で CO 濃度とセンサ応答は比例関係を示しており,低濃度領域における定量検知が可能なことがわかった.2.2.1.3 高効率電子エミッター2) CNT はフィールドエミッションディスプレイや液晶ディスプレイのバックライトへの応用が期待されている.その実用化のためには,低電界で大電流が得られること,その安定性,大面積化が可能な作製プロセスが求められている.この条件を満たすものとして,印刷型電子エミッターがある.しかし,従来型のものでは,精製処理を経た CNT を用いているため,CNT の凝集や長さのばらつきに由来して,エミッションの再現性や均一性が悪い等の問題が顕在化している.そこで,精製処理が不要で長さが--センシングデバイス部門 図2.2.1.1 Pt修飾SWNTセンサの模式図. ヒーター アルミナ 電極 Ptナノ粒子 SWNT 図2.2.1.2 Pt修飾SWNT. 図2.2.1.3 センサ応答のCO濃度依存性. 図2 Pt修飾SWNT. Ptナノ粒子 0.140.120.100.080.060.040.020.00Sensor response (-∆G/G0)300250200150100500Time (s) 1 ppm 5 ppm 10 ppm 10 ppm (vacuum)CO18

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