平成19年度実績報告書
14/126

2.1.3 パワーデバイス設計葛原正明福井大学 工学研究科・教授2.1.3.1 はじめに 窒化物半導体は,GaN,AlN,InN を代表とするIII-N族化合物(および混晶)半導体の総称である.なかでも,GaN はバンドギャップが 3.4eV と大きいにもかかわらず,電子移動度と飽和速度がSi半導体より高く,しかも Si や GaAs に比べて約1桁大きな絶縁破壊耐圧をもつことが知られる(図2.1.3.1).トランジスタに用いたときに予想されるデバイス特性の理論計算やフィールドプレートを用いた耐圧設計などに関する研究を,福井大学で開発したデバイスシミュレータを用いて進めている.また,実際のデバイス試作に向けた個別プロセス技術の研究やデバイス動作の不安定性の評価解析などにも焦点を当てて研究を進めている.長にて1THzを超える電流利得遮断周波数が実現できる可能性を示した(図2.1.3.2).今後は無極性面基板上に作成したエピ構造を用いてダブルヘテロ接合 HEMT を試作し、その有効性を実証していく.2.1.3.3 高耐圧化の研究 今日の AlGaN/GaN系 HEMTの開発においては,フィールドプレート構造(図2.1.3.3)を用いてゲート耐圧を改善する技術が広く用いられている.本研究では,2次元モンテカルロシミュレータを用いて,フィールドプレートの断面形状(ステップ構造,多段ステップ構造,傾斜構造)および表面絶縁膜のパワーデバイス部門InN54AlSbInNSiGeInAsGaAsInPGaPAlPZnSeCdSMgSeMgSZnSBandgap (eV)Lattice Constant (A)356721InSbCdTeGaSb7654340AlNCdSeGaNSiC(4H)DiamondPSPAlSbInNSiGeInAsGaAsInPGaPAlPZnSeCdSMgSeMgSZnSBandgap (eV)356721InSbCdTeGaSb7654340AlNCdSeGaNSiC(4H)DiamondPSPAlSbInNSiGeInAsGaAsInPGaPAlPZnSeCdSMgSeMgSZnSBandgap (eV)356721InSbCdTeGaSb7654340AlNCdSeGaNSiC(4H)DiamondPSP図2.1.3.1 半導体のバンドギャップと格子定数.このため,窒化物半導体は,高速・高周波デバイスおよび低損失高耐圧デバイス用材料として応用が期待される.しかし,いくつかの問題点や性能限界も顕在化している.その例として,パワーエレクトロニクス応用で必須のノーマリオフ動作が難しい問題,1000V を超える高耐圧化設計技術が未確立であること,さらなる高速動作のための研究の遅れなどがある.デバイス技術の発展には,これら問題を解決する探索研究の推進が強く望まれる.本COEでは,未開発の窒化物ヘテロ接合材料を電界効果2.1.3.2 高速動作の研究 GaN と InN の三元混晶である InGaN は GaN より電子輸送特性に優れるため,高速・高周波トランジスタのチャネル材料として期待される.本年度は,分極効果のない AlInN/InGaN/AlInN ダブルヘテロ構造 HEMT について,ナノメータ級に短チャネル化した時の電流利得遮断周波数をモンテカルロ2次元デバイスシミュレータを用いて理論解析した.その結果,InN または高In組成InGaN をチャネル材料に用いたとき,50nm以下のゲート50200.511.5dBar=10nmInN channelIn0.5Ga0.5N channelGaN channel InN channelIn0.5Ga0.5N channelGaN channel VDS=5V,Gate Length (nm)Cutoff Frequency, f(THz)050100150200250Non-polar Materials図2.1.3.2 InGaNチャネルHEMTの遮断周波数.14

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です