平成19年度実績報告書
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2.1.2 ワイドギャップ半導体デバイスの開発伊藤利道電気電子情報工学専攻・教授2.1.2.1 研究背景 ワイドバンドギャップ材料の一つであるダイヤモンドは,半導体材料中で最も強い絶縁破壊耐性,常温近傍における最も大きな熱伝導度,あるいは,最も広い電位窓など,優れた物性を多く有している.その卓越した絶縁破壊耐性及び熱伝導特性により,Johnson’s,Keyes’,及びBaliga’s性能指数はいずれも,他材料に比べ格段に大きい値を示すため,パワーエレクトロニクス材料としての活用が期待されている.しかし,ダイヤモンドの電子デバイスへの応用を実現するには,高品質結晶の作製プロセスを含め,多くの開発課題を解決する必要がある.我々は,これらの未解決課題について順次基礎的観点から研究を行い,それらの解決に寄与することを目指している.例えば,高出力マイクロ波プラズマ(MWP) CVD法を用いた作製プロセスにおいて近年大きな進展があり,従来せいぜい数十nm/h程度の成長速度でしか得られなかった高品質試料を数μm/hで成長できるようになっている [1,2].本年度は特に,p型[3],及び,n型ダイヤモンドの作製プロセスの改善[4]を行なうとともに,ダイヤモンド電子デバイスの実用化が最も早期に期待できると予想される紫外線・軟X線検出器の試作に関する研究[5]を行った. 2.1.2.2 p型ダイヤモンドの作製プロセスの改善 ダイヤモンドのp型不純物はホウ素であるが,これまでのMWPCVD法におけるドーピング効率は余り高くなく,ホウ素ドープ濃度を増大すると正孔移動度が大幅に低下するなど,その作製プロセスの改善が必要である.我々は最近,微斜面(オフ角)を有する(低品質)単結晶基板を用いてアンドープ試料のホモエピタキシャル成長を行なうと,成長速度が増大するばかりではなく,結晶品質も改善されることを見出した[6].そこで,p型ダイヤモンドのホモエピタキシャル成長における基板オフ角(≤5度)が及ぼす効果について同様に調べた結果,以下のことが判明した[3]:ホウ素ドープ試料の場合も,(001)基板オフ角の増大とともに成長速度が増大する(図2.1.2.1(a));オフ角の増大とともにドーピング効率が向上する(図2.1.2.1(b));オフ角の増大とともに成長したダイヤモンド薄膜の結晶品質が改善される傾向がある. パワーデバイス部門 0 1 2 3 4 5 0 1 3 4 2 Off Angle [deg.] Relative Space Charge Density (a) (b) 図2.1.2.1 ホウ素ドープホモエピタキシャルCVDダイヤモンドの (a) 成長速度 及び (b) 空乏層の電荷密度(相対値)の基板オフ角依存性.オフ角0度= (001) 面. 4 5 6 0 1 2 3 4 5 Growth Rate [µm/h] Relative Growth Rate Off Angle [deg.] 1.61.41.21.012

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