日本学術振興会アジア研究教育拠点事業
 
高強度フォトンを使う高エネルギー密度状態の科学
■研究活動計画 ■メンバー     
 
研究活動計画
高密度フォトンを使う高エネルギー密度の世界
 (1)超高強度レーザーをプラズマに照射し電子を相対論領域の速度に加速することで、電子電流は100Mega Ampereを超え、その状態は太陽の内部に迫る高エネルギー密度状態となる。此処で発生するレーザーと物質相互作用を解明する事は巨大な大型の粒子加速器をレーザー集光距離の数センチで実現する粒子加速研究、大規模電子電流を使ったプラズマデバイス、レーザー生成プラズマをジェット状に噴出させて宇宙の巨大無衝突衝撃波現象を解明する実験室宇宙物理など高強度フォトン(レーザー)を使う科学の最先端であり且つその成果は重要な波及効果を持つ。
(2)この研究からは、プラズマ相を積極的に、材料の保護層として使う新しい概念の宇宙船外壁、アークプラズマと接触する電流遮断機などへの応用が可能となる。
 
本事業の狙い
【共同研究】
 高強度フォトンを使う高エネルギー密度状態の科学をアジアにおき一層発展させるため、中国上海交通大学、インド Institute for Plasma Research (IPR)、韓国KAERIと大阪大学を結ぶ研究教育ネットワークを確立する。世界でも有数の高出力超高強度レーザー(拠点)や複数の高性能レーザー(関西原研、中国、インド、韓国)を共同研究実験に用い、またインド IPRと共同開発する新流体コードを用い、韓国KAIST・KAERIの原子・分子データベースを駆使し研究を進める。此によりデータベースに基づく実験・理論による高エネルギー密度科学の学問体系を構築することが可能となる。世界の高エネルギー密度科学分野で、拠点の研究者がリードする@相対論レーザープラズマ相互作用、Aプラズマデバイス、B実験室宇宙物理、C粒子加速及びD極限環境下の材料科学という5本の基軸テーマを展開する。アジアからの参加研究者もこれらのテーマに関わる方が集まっており、緊密な共同研究展開が可能となる。
 
【情報ネットワーク】
 これまでの共同研究で確認されつつある各国の特徴を最大限に活かし科学研究を推進する。特徴(1)海外機関及び我が国の複数の高性能レーザー装置で共同研究を組み合わせる効率運用、(2)韓国の得意とする原子・分子データへのアクセスの強化、(3)インドで発案される独創的な流体コード開発に代表される数学・物理概念の共同研究へのいち早い組み込み、(4)中国が得意とするシミュレーションパラメータサーベイなどを実施する。こうした展開は、拠点を中心として既に世界的評価が高い高エネルギー密度状態の科学研究を新しいフェーズに進展・拡大させることにつながり、ひいてはアジア全体の研究の活性化をさらに促す。
 
【若手育成】
 国際共同研究では、テーマに応じた複数の教授・若手ペアを双方の国で組織し、綿密な打ち合わせにより研究計画を立て実施する。このシステムにより若手は、国際的な共同研究ノウハウを効率よく継承・発展させる。拠点における大学院高度副プログラム「学祭光科学」や「国際物理コース」をベースにした日本及びアジアからの参加大学院生の教育を実施する。本計画で育つ若手研究者は、引き続き拠点における博士研究員制度、関西光科学研究所の博士研究員、任期付き研究員(外国人登用含む)制度を使った研究を実施する。 
アジアとの連携
 2008年9月に開催されたInternational Congress of Plasma Physics(ICPP、博多国際会議場)のF.Wagner博士によるサマリー講演において、レーザーを用いた高エネルギー密度科学関連の部分は、ほぼ大阪大学の拠点申請グループからの成果であった。過去に6回米国物理学会の招待講演を行った実績、2001、02、04、09年に続けてNature誌に論文掲載の実績は特筆に値するものであり、これまで世界の第一線において非常に強い存在感と指導力を発揮してきた。超高強度レーザーを使い、高エネルギー密度科学を推進する米国、英国、仏蘭西などと激しい競争状態にあり、欧米では既に独自の教育研究ネットワークが立ち上げられ、盛んにEU、米国内において共同研究と若手教育が進められている。
 ここで提唱するプログラムは、これら研究実績に基づきアジアの共同研究ネットワークを構築するものである。欧州内や米国内で立ち上がりつつあるこの分野の国を挙げたネットワークに競争的に対応するものであり、アジアでの立ち上げは必須である。この立ち上げを行わなければ日本を含むアジアの関連研究は、独自の特徴・利点である世界最高性能レーザー装置を最大限有効に利用することもなく、情報交換ネットワークが存在しない、個別の活動に陥ってしまい、欧州で展開されようとしている研究者交流、共同研究を中心にしたネットワーク構築に遥かに遅れをとる。日本がアジアでの主導権を持ちつつ、世界をリードするために愁眉の急と言える。 
 
メンバー
各拠点コーディネーター
 
日     本 田中 和夫、大阪大学
中     国 Jie Zhang、上海交通大学
韓     国 Yongjoo Rhee、韓国原子力エネルギー研究所
イ  ン  ド Predhiman Kaw、プラズマ研究所
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